ホンダF1テクニカルディレクターの田辺豊治氏は「今年は我々が目指していたような結果を得ることはできませんでした」とコメントしている。常にポーカーフェイスで、オーストリアの表彰台で目を赤くした時も「シャンパンが目に入っただけ」と話していたように常に現実的なコメントをしているが、鈴鹿でのこのコメントには大きな悔しさを感じる。

 今年の日本GPはレッドブル・ホンダの2勝を引っさげての凱旋だった。期待も大きく、例年以上に観客が入った。そしてホンダスピリッツの原点、聖地・鈴鹿。目指した結果を得られなかったことの悔しさは決して忘れないでほしい。

 レッドブル勢にもホンダにも大きなポテンシャルがある。それは間違いないことであり、ジョイント1年目で去年よりもドライバー層が薄くなったことは向かい風でもあるが、2勝はできた。だが、それだけでは継続して勝てないということを鈴鹿がホンダに示した。順位以上に直視しなければいけないことが、そこにはある。

 今回のレースでメルセデスが6年連続のコンストラクターズタイトルの偉業を成し遂げた。F1の歴史の中でもこれだけ長い期間『Top of the top』であり続けたチームは、1999年から2004年のフェラーリ以外にいない。モータースポーツ史に残る歴史的快挙だ。

 そのメルセデスの前身はロス・ブラウン率いる『ブラウンGP』で、その前身はリーマンショックで撤退した第3期ホンダF1だ。そんなメルセデスも最初は勝てない時期が続き、あの皇帝ミハエル・シューマッハですら未勝利で2回目の引退をした。

 レッドブル勢とホンダも悔しくて悔しくて仕方ないだろう。歯痒くて仕方ないだろう。それでも、それでも歩みは決して止めてはならない。いつか報われる日は必ず来る。アメリカで活躍するホンダのドライバーの言葉を思い出そう。

 “No attack, No chance”

 挑まねば挑戦できない。挑まねば勝つことはできない。ドライバーはやれるだけのことはやっている。残るはチームだ。怯まずに前を向いて、残り4戦、力の限り勝利を掴みに行ってほしい。次は54年前にホンダF1が初優勝を遂げたメキシコGPだ。(文・野村和司)