投手には『自分が最強だ』と思っているタイプが多い。また、それくらいの気持ちの強さがないと、務められないポジションでもある。

「捕手としての我は、どちらかといえばチームの意図に近い部分がある。捕手はグラウンド上の監督とも言われるポジションだから、チームを勝利に導くことが求められる。自分の配球などがうまく行った時は本当に気分が良い。でもサインを出していて、気持ち良く打者を打ち取れると配球に酔ってしまうこともある。こういう時は悪い結果につながることが多い。わかっていてもそういう失敗を繰り返してしまう」

 自らの力量に絶対的自信を持つ投手と異なり、捕手は結果から逆算的に自信を持つタイプが多いようだ。さまざまな考えが渦巻く中で、一瞬の間に攻め方を構築しないといけない。

「迷います。その時には投手やコーチ、時には野手とも話し合う。投手がわがままを通そうとした時には厳しく言う時もある。すべてがうまく行って打ち取れるわけでもないですが、確率は高めたい」

■目指すは『パッジ』 すべてを揃えたアルティメット捕手

「打撃も好きです。もちろん自分が打てばリードも楽になる。でも僕に求められているのは、まず捕手としての仕事。まあ、下位を打って、たまに結果を残すくらいで良いんじゃないですかね」

 今年のレギュラーシーズンの打率.260、11本塁打、43打点は十二分な成績だと思うが、そこにスポットが当たるのは本意ではない。照れ笑いを浮かべて謙遜した。

「2年連続で勝てなかった。やっぱりレギュラーシーズンで負けたという意識がある。プロの長丁場で頂点に立てないというのは、僕の責任も大きい。相手チームに研究されても、その上をいける捕手にならないといけない。そのためにも先発投手を中心に、しっかりとリードしないといけない。僕が求めている捕手像までの、先は長い」

 盗塁阻止に特化した『甲斐キャノン』が武器の甲斐は、いわゆる専門職の捕手と言える。だが、それでは納得できない。求めるのは、すべてにおいて突出したものを備えた『アルティメット』な捕手だ。

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理想は『パッジ』にあり