次は何を仕掛ける?秋元康 (c)朝日新聞社
次は何を仕掛ける?秋元康 (c)朝日新聞社

 国民的アイドルとして大ブームを巻き起こしたAKB48や、その後の乃木坂46を始めとした「坂道系」の人気も一時に比べ、だいぶん落ち着いてきた感がある。いよいよ大所帯アイドル時代の終焉か……という雰囲気も業界内では出てきているなか、改めて秋元康(61)が脚光を浴びているというのだ。

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 謎解き、犯人捜しで大いに盛り上がったドラマ「あなたの番です」(日本テレビ系)。実はこれ、秋元の企画・原案である。

「4月から2クール連続で放送された『あな番』は、前半クールの段階では平均視聴率7%台と、それほど目立った作品ではなかった。ただ、その前に同枠で放送された『3年A組』や『今日から俺は!』はHuluなどで全話配信されたこともあり、“後追い”できることに視聴者がなれていた。配信で見た層が後半戦でしっかり追いついてきたので、後半クールで視聴率がぐっと伸び、最終回ではまさかの19%台となったのです」(放送作家)

 結果的には大成功だった「あな番」だが、大抵の視聴者は西野七瀬が演じる黒島ちゃんが真犯人だと予想できていたし、多くの伏線が回収しきれないまま残ってしまった。さらに最終回もすっきりとしない結末と、作品そのものや同じ枠の次クールのドラマにも懐疑的な声が寄せられてしまっている。

「同作は、これまでのような視聴者に毎週ドラマを見せるスタイルではなく、配信による“イッキ見”に対応した作品になっているんです。『毎週、死にます』というキャッチコピー通り、ドラマ全体で大きな謎(真犯人はだれなのか)を設定しながら、毎回小さな謎(30人いるキャストの誰かが殺される)を解決していくストーリーです。さらに次シーズンに繋がるような仕掛けもしっかり入れています。これは、放送が開始されたら全話を通しで見られる昨今の海外ドラマと同じ手法。実際、『あな番』も後半が始まってからいっきに前半の再生回数が多くなったそうです。こうした作品の場合、脚本は多少雑でストーリー全体に深みはなくても、その疾走感で謎を追いたくなれば視聴者を惹きつけられる。毎週待ってみるのはダルいので、配信で一気に2~3話見てしまう“片付け見”に適しているんですよね」(民放ドラマプロデューサー)

 現在、日テレではHulu配信との連動に力を入れている。その中で、秋元の脚本家としての手腕が存分に発揮されたというところだ。秋元は、引き続きさまざまなタイプのアイドルをプロデュースし続けているが、その一方で多くのテレビ番組にも関わっている。アイドルプロデュースが一段落したように見えるが、今後は本格的にドラマの企画や脚本を手掛けていきそうだ。

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円熟味を増す手腕