■卒業生に活躍の場を与えるという目的

 こうしたなか、今注目されているのがテレビ東京のバラエティ番組「青春高校3年C組」だろう。こちらも、Tverに加えてテレ東系のオンデマンド配信・パラビや若者に人気のストリーミングアプリ・SHOWROOM、そしてGYAO! やニコ生などありとあらゆる配信放送に対応している。

「実はこうしたネット配信は、地方局との関係もあり関係各所の調整が難しいという面もあるんです。つまり、どこでも見られる配信番組が人気になってしまうと、地方局の制作事業は苦しくなってしまうからです。各社調整に腐心していますが、『青春高校~』はネット局が極端に少ないテレ東だからこそできたのだと思います」(同)

 もともとテレビの放送作家として、数々の人気番組を手掛けてきた秋元。ここにきて、アイドルやイベントとテレビ放送、ネット配信を融合させることにようやく成功したということか。その手腕も円熟味が増してきている。

ドラマの企画と平行して、現在も膨大な数のアイドルグループの企画に関わっていますが、正直、AKB48や坂道系以上のものはもう出ないでしょう。今後は、関わってきたメンバーの“活躍の場”を模索しているのかもしれません。アイドルグループは卒業すると仕事が減ったりなくなるというのは、多くの前例を見ても明らかです。その点、自分でドラマをプロデュースすれば主演から脇役までこうした子たちを配役できるし、バラエティならMCのアシスタントに起用することもできます。クロスオーバーな展開は、秋元さんの真骨頂です。現に、彼がいま手掛けている番組には、最もお気に入りとされているNGT48の中井りかがこれでもかというくらい起用されています」(前出の放送作家)

 TVウォッチャーの中村裕一氏は、秋元の今後についてこのように予測する。

「放送作家から作詞家、プロデューサーとして実にさまざまなアーティストやタレント、テレビ番組などと広く深く携わり、80年代から現在まで日本のエンタメの中核を担って来た存在であることは間違いないでしょう。来年は組織委員会の理事を務める東京五輪でどのような関わり方をするのかも気になります。活動範囲がこれだけ多岐に渡ると、果たして1つ1つの企画にどこまで深く関与しているのかは分かりませんが、今回の『あな番』がヒットし、彼の企画およびプロデュース力が今なお健在であることが証明されたのではないでしょうか。また、おそらく現時点での彼のキャリアの集大成とも言えるAKBグループですが、何事も始まりがあれば終わりもあります。アイドルを巨大ビジネスにまで拡大させたこの一大ムーブメントを、フィナーレに向けて彼がどうまとめ上げるかにも注目です。もちろん、それらとはまったく異なるような、世間をアッと驚かせる新しい企画を練っているかもしれません」

 稀代のプロデューサーが着々と進めていたその手腕、今後の展開が楽しみだ。(黒崎さとし)