現在、この東海道貨物線には定期旅客列車として「湘南ライナー」系統の一部が通っている。都心方面からたどると、東海道本線の鶴見の先で地下トンネルに入り、横浜都心部を山側に迂回して東戸塚付近で東海道本線と合流する。ルート上には連続する長大トンネルや騒音防止シェルターなどが多く、その車窓は旅客線ルートと大きく異なる。

 東海道貨物線の鶴見より北、東京貨物ターミナル~浜川崎間は羽田空港付近の地下を通過しているが、このルートを生かす形で「羽田空港アクセス線」の構想がある。

 これは、JR東日本が2013年10月にその検討について触れたもので、品川付近と羽田空港とを結ぶ案が浮上している。完成すれば首都圏各地と羽田空港を結ぶ空港連絡列車の運行も可能となり、利便性は大きく向上することになるだろう。しかし、単線区間があることや、空港ターミナル直下に路盤や駅を新たに設けるなど、実現に向けて課題も多くある。

■貨物専用区間を走る臨時旅客列車も

 このように貨物線事情もさまざまあるが、いま注目したいのが武蔵野線だ。武蔵野線はもともと貨物線で、都心を通る山手貨物線の代替ルートとして位置づけられてきた歴史を持つ。開業当初から貨物列車とともに旅客列車も運行されてきたが、府中本町~鶴見間はいまなお貨物専用線となっており、定期旅客列車は運行されていない。

 ただし、この区間を走る旅客列車はある。週末を中心に南越谷~鎌倉間で運行されている快速「ホリデー快速鎌倉」だ。運転区間もちょっと奇想天外な感じもするが、貨物列車にとってはごく当たり前のルートでもある。

 府中本町~鶴見間28.8キロの多くはトンネルが占め、途中に梶ケ谷貨物ターミナル駅と新鶴見信号場が設けられているが旅客駅はひとつもない。通常はなかなか乗れない区間なだけに、断続するトンネル区間を抜けた途端、まさに「思ってもみなかった場所」に出たような印象を抱くかもしれない。

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