それと、入院中はこれがいちばん気がかりだったんだけど、無駄酒も飲まなくなったよ(笑)。6月中旬に退院してから8月まで、10回も飲んでない。退院してから最初に「解禁だ!」って飲んだときは、うれしくて写真をインスタグラムに上げたけど、「飲みたいな」という気分になる割合が減っちゃった。

 極端な話、350ミリリットルのビール缶が空けられない。「今日はもういいかな」と思って缶を振ると、まだピチャピチャと残ってる音がする。本来なら、夏には津軽海峡ぐらいは飲んでいたのに(笑)、今は1日に2リットルの水ばっかり。こんなことになっちゃって、ウォーターサーバーの会社から提供が来ないかな(笑)。

 もう、昔のようにはいかない。「俺が意識を変えないと、身体はついてきてくれない」っていうことだよね。自分の身体は壊れないものだと思っていたけれど、いたわってあげないと、いつかはほころびがくる。それで俺に何かが起きたときには、周りの人たちにいらぬ手間を、迷惑をかけるということが身に染みたよ。

 何度も言うけど、「病気なんて、俺はまだ大丈夫だろう」なんていう人は、俺のことをきっかけに、自分の身体のことを見直すようにしてほしい。「あんなに丈夫だと思ってた天龍が、こんなことになってるのか」って、ちょっと気にするだけでもいいから。

 ラッキーなことに、俺にはプロレスを辞めても露出の機会があるし、まだ天龍源一郎として輝ける場所がある。1度目に退院した翌々日には藤波さんと、先日も長州選手とのトークショーを開いたしね。それと、このインタビューのように発言する機会もあれば、それを目に留めてくれる人もいるわけだし、これってやっぱり幸せなことだよね。ファンは気が付かなかっただろうけど、トークショーのときはいつ発作が出るか分からない中で、俺も家族も相当の覚悟で臨んでいたんだよ。

 だから、闘病中のレスラーに対しては、「もうちょっと、お互いに頑張ろうぜ」っていう気持ちが強まった。みんなも、自分の職業のなかで精一杯頑張ってほしい。それが自分の証明、存在価値を示すための第一の手段だから。

 特に若い人は、「しょせん俺なんて」とか、「俺なんかが言ったって」という投げやりな思考に陥りがちだけど、自分が発言したことや生き様というものは、誰かが必ず見てくれている。極端な言い方だけれど、「今を一生懸命に生きる」ことができれば、「明日は必ず来る」ということを、強く伝えたい。「生きている」ではなく、「生き抜く」という強い意志を持って、人生をまっとうしてほしいよ。

 引退してからの4年間で、いちばん大きな出来事の話は、これでおしまい。ついでに話すと、2番目はドキュメンタリー映画を撮ってもらったことで、次が相撲部屋との交流ができたこと。ほかには何だろう……あ、娘の結婚があった。これは4番目だな(笑)。

(構成/小山 暁)