つまり、今回のトウモロコシ大量輸入は、害虫被害がわずかであるだけではなく、仮にこれからツマジロクサヨトウが大量発生しても簡単に代替の飼料として使用することはできないことになる。

 それではなぜ、政府は「害虫被害」を理由にトウモロコシの大量輸入をするのか。前出の鈴木教授は言う。

「安倍政権は、米国との貿易交渉に入る前に『TPP水準』を交渉の土台とし、国内にも『TPP以上の譲歩はしない』と説明してきました。それが、米中の貿易摩擦であまっていたトウモロコシを日本が輸入することになると『TPP超え』になってしまう。そのことをごまかすために、『害虫被害が発生した』と説明したのでしょう」

 米中の貿易摩擦が激化するなかで、トランプ大統領はトウモロコシの輸出先を探していた。それを日本が引き受ける形となった。だが、害虫被害がほとんどおきていない現状では、輸入されたトウモロコシは大量にあまる可能性が高い。

「害虫被害が限定的であることは調べればすぐにわかるのに、ほとんどのメディアがそのことに触れていません。安倍政権の説明を“忖度”してそのまま報道するとは、情けないとしか言いようがありません」(鈴木教授)

 安倍政権は、トウモロコシの大量輸入に向けて新たな補助金制度を作るという。莫大な税金を投入して得られる“国益”とは何か。ただ、トランプ大統領が上機嫌であることだけはたしかなようだ。(AERA dot.編集部/西岡千史)

※青刈りして葉や茎も発酵させて与えるトウモロコシと、実った実の粒を配合して与えるトウモロコシを「サイレージコーン」と「デントコーン」として対比したのは不適切だったため、該当箇所を訂正しました。なお、この箇所は鈴木宣弘教授の発言ではなく、記者が鈴木教授の取材した内容を誤って引用したものでした。鈴木教授にご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます。