※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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岩手医科大学病院耳鼻咽喉科教授の佐藤宏昭医師
岩手医科大学病院耳鼻咽喉科教授の佐藤宏昭医師

 年を取ると誰しも気になるのが「耳の聞こえ」。自分だけでなく、親や友人などの聴力が気になる人も多いでしょう。しかしそもそも、難聴とはなんなのでしょうか? 原因は? 耳が悪い人の特徴は? 耳鳴りとの関係は? 今こそ聞きたい耳の素朴な疑問について、岩手医科大学病院耳鼻咽喉科教授の佐藤宏昭医師が回答しました。週刊朝日ムック『「よく聞こえない」ときの耳の本[2020年版]』からお届けします。

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Q 耳のいい・悪いは遺伝で決まる?

A 遺伝の影響もあるが多くは生活習慣や加齢

 遺伝子研究により、難聴に関わる遺伝子タイプはすでに100種類以上見つかっています。同じ遺伝子をもつ一卵性双生児による聞こえの追跡調査でも、双子が高齢になってからの聞こえの状態に相似点が多いなど、聞こえと遺伝の関連性にはいくつもの報告があります。ただし、難聴については、その多くは騒音暴露や長年の生活習慣、加齢などの後天的な要因が複数関与して発症します。

Q 難聴になると自分の声も聞き取りにくい?

A 周囲の音だけでなく 自分の声も聞こえにくい

 難聴者が人との会話のなかで、時に怒鳴っているような大きな声で話していることがあります。それは難聴になると周囲の音だけでなく、自分の声も聞き取りにくくなるためです。難聴者が補聴器を周囲の音だけでなく自分の声も聞こえにくい装用し、聞こえの状態を取り戻すと、再び自分の声もよく聞こえるようになり、大きな声で話さずに済むようになります。
 
 高齢者の場合、聞こえの悪化は本人だけではなかなか気づきにくいものです。周囲がそうした変化に気づいたら、耳鼻咽喉科の受診を勧めてあげましょう。

Q 初対面の人の声は親しい人の声よりも聞き取りにくい?

A 脳が言葉を予測できない慣れない声は聞きにくい

 家族など、親しい間柄で聞き慣れた人の声は日ごろから繰り返し聞いているために、脳が言語情報を処理する場合にある程度の予測ができ、言葉も聞き取りやすい傾向があります。難聴で高音域が聞き取りにくいなど、会話の中によく聞こえない音が含まれていたとしても、親しい人の声であれば、だいたい聞けてしまうということはあります。

 ところが、初対面の人の場合にはそうした予測ができないため、かなり言葉も聞き取りにくくなります。聞こえが悪い人が初対面の人と話す場合は、聞きとりやすいように相手の口元を見ながら会話し、相手にもできるだけゆっくり話してもらうようにするといいでしょう。

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