「撮影者は撮った写真の著作権を持っているので、何でも自由に使っていいと思いがちです。でも、写真を撮った瞬間にモデルには肖像権が発生します。これは憲法上の人権の一つと考えるべきで、撮影者が買い取って自由に使えるというわけではない。あくまで、モデルから肖像権の利用許諾を受けたという前提があるから、撮影者は作品を利用できる。モデルから肖像権の利用許諾を取ったかどうかの証明は、撮影者に立証責任があります」(馬場弁護士)

 方法としては、本誌6月号で昨年紹介したような署名、押印をする確認書を取り交わすのが理想。だが、前述のように撮影前はSNSのやりとりだけでモデルと会う機会がないケースも考えられる。その場合、LINEやツイッターのDMでもいいので、写真家が事前に要件をまとめた文章を送り、モデルからそれを承諾したという返信をもらっておくことが肝要だという。

「撮影場所と時間、ギャランティー、そして写真の使用範囲が明記されていれば、最低限は大丈夫だと思います。特に、撮った写真の使用範囲が最も重要になってくるので、撮影者としては、なるべく幅広い使い方ができるような書き方にしておいたほうがいいでしょう」(馬場弁護士)

 撮影後に自分の写真がどう使われるのかというのは、モデル側の最大の関心事だ。撮った写真を個人で保存、現像するだけなのか、コンテストなどで発表するのか、HPやSNSなどで作品として載せるのかなどは、慎重すぎるほど事前に確認しておいて損はない。鎌田さんはこう話す。

「撮影した写真を一枚一枚チェックできるわけではないので、常に不安はあります。私は、SNSへアップする時はその都度連絡をもらい、すべて写真をチェックしています。撮影会でも事前に告知します。そうしないと、自分が意図しない写真が無限に拡散される恐れがあるからです」

 実際に“被害”にあったモデルもいる。レースクイーンや撮影会のモデルをしている紗季さん(=仮名=28)は、自分の写真が「出会い系サイト」に掲載されているのを見て、仰天したという。衣装はモーターショーでの撮影会で着ていたものと同じだった。

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モデルが嫌がる撮影は 民法上の不法行為にも