男子校から共学化した別の野球強豪校の元野球部長は、興味深い話をしてくれた。

「共学のほうが野球部員の励みになるんです。だってそうでしょ。女の子から応援されれば部員はものすごくがんばりますよ。うちも男子校だったのですが、そのころに比べると部員は明るい。でも、女の子にうつつを抜かすという部員はいませんね。彼女がいる部員もいますが、ちゃんと野球に集中していますから」

 また、野球強豪校のなかには大学付属、系列の学校が少なくない。大学の募集戦略として、付属、系列を共学化して優秀な生徒を大学に受け入れたいという思惑もあるようだ。

 少子化により、その逆のケースも起きている。かつて女子校だったところが、校名を改称し男子を受け入れて野球部を強化している。済美(愛媛)、神村学園(鹿児島)※などである。

 また、野球部を強化して甲子園出場を果たした学校はたいてい共学である。鶴岡東(山形)※、遊学館(石川)、京都翔英(京都)、大阪偕星(大阪)、秀岳館(本)などだ。

 私立男子校野球部の雄として圧倒的存在感を示すのが、横浜(神奈川)である。ここ数年、横浜が甲子園に出場していたため、甲子園の男子校文化が続いていた。

 しかし、横浜も来年2020年から共学になる。少子化には勝てなかったようだ。同校ウェブサイトには、女子の制服が紹介されている。そして校長はこう宣言している。

「変わります!横浜高校(略)さて21世紀の今、グローバル化していく新しい時代に、若き青少年の皆さんは生きています。2020年の本校共学化は、学校史上、大きな変革の年です。これを機に、本校では建学の精神である三条五訓に加えて、新たな理念(ミッション)を二点掲げます。そのキーワードは、“思いやり”と“グローバル人財”です。これからますますグローバル化が進む中で、男女ともに、より一層社会(仕事)に参画する時代です」(ウェブサイトから)

 松坂大輔、筒香嘉智ら名選手が何人も輩出した横浜は、男臭い硬派なイメージがあった。しかし、「グローバル化」の波はここまで押し寄せている。数年後、甲子園の同校応援席にはチアガールが現れることになり、それによって選手たちはおおいに励まされるだろう。早ければ来年にも。

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「文武両道なんか大嫌いだ」