私立男子校野球部強豪校は絶滅危惧種になろうとしているのだろうか。

 1960年代から90年代ぐらいまで、つまり昭和から平成はじめのころまで、甲子園は私立男子校野球部の天下だった。男子校だった北海や早実や広陵、それに平安(現・龍谷大平安)や中京(現・中京大中京)といった甲子園常連校が、全国制覇をめざしてブイブイいわせていた時代だ。そのころ、甲子園常連のある私立男子校野球部員が「文武両道なんか大嫌いだ」とこんな話をしていた。試合で絶対に負けてはいけない相手である。

●男女共学(女子の声援を受ける相手に激しく嫉妬し許せない)
●進学校(勉強が嫌いだから野球しているのに勉強できるヤツに負けるのは恥ずかしい)
●公立高校(朝日新聞とNHKは公立ばかりひいきするな) 
●長髪選手がいる(チャラチャラしやがって)
●誰でも試合に出られる部員少数校(ベンチ入りするのにどれだけ苦労したと思っているんだ)
●旧制中からの伝統校(応援席にOBが多すぎないか)
●グラウンド共有で練習は1~2時間(夜10時11時までの練習はあたりまえだろ)
●試合中に笑顔が絶えない(どこが楽しいんだ。こんな苦しいことはない)
●まじめでさわやか(おれら野球してなかったらただの不良だし)
●私服通学の学校(ボンタンのどこが悪い)

 いま、野球強豪校は共学化が進み、練習も効率化され、気合や根性は少なくなったと言われている。学校の勉強もよくするので、こんな話もあまり聞かなくなった。

 一方、「甲子園か東大か」の東大はどうなのだろうか。

 東大合格者上位校はもう何十年も開成、灘、筑駒、麻布、栄光学園、聖光学院、海城、駒場東邦、ラ・サール、東海など依然として男子校が並んでいる。甲子園と比べると、進学校のほうが、時代遅れの感を受けてしまう。

 甲子園出場全49校の選手のみなさん。がんばってほしい。

教育ジャーナリスト/小林哲夫