日本人でNBAのコートに立ったのは、2004年にフェニックス・サンズで4試合に出場した田臥勇太(現Bリーグ、宇都宮ブレックス)と、昨年メンフィス・グリズリーズで15試合登場した渡邊雄太だけ。しかし、2人ともドラフト外契約となっており、正直なところチームやファンの期待値には八村と雲泥の差がある。

 それを証明しているのがSNSでの露出だ。ドラフト以降、各チームは指名した選手をSNSなどで連日大きく扱っているが、それはウィザーズのSNSでも同じだ。八村のドラフト当日前後の様子から、ワシントンDC入り、契約、練習、そしてサマーリーグにおける八村の一挙手一投足を動画や画像で配信。さらにはそれを日本語で投稿するなど、最高クラスの待遇で扱っている。

 チームの指揮を執るスコット・ブルックスHCも、「彼(八村)は負けるのが嫌い。負けたら自分のせいだと思うタイプ」とセルフィッシュにならず、また他責しない人間性に言及。「リーグで素晴らしい2ウェイプレーヤーになると思う」と期待を寄せているのだ。

 そんな八村だが、気になるのは果たしてルーキーシーズンから活躍できるのかということだろう。

 八村は、ゴンザガ大学時代からオフェンスには定評があったが、ロングシュートとディフェンスに課題があることを指摘されていた。特に気になるのは3ポイントシュートで、大学3シーズン合計で102試合に出場し成功は24本に止まる。放った本数は76本だが、これをアベレージにすると0.7本。つまり、チーム事情や役割はあるにせよ、そもそも3ポイントシュートをそれほど打っていなかったということだ。

 フォワードとしてプレーする八村だが、現在のNBAは、パワーフォワードで外からもシュートが決められるストレッチ4というポジションが重宝がられる。恐らくウィザーズでもスモールラインナップとなった時には、八村にこのポジションを期待しているはずだ。

 八村は、サマーリーグの3試合でFG成功率50%で平均19.3得点を叩き出したが、長距離砲は最後のプレーとなったアトランタ・ホークス戦で2本決めただけ。もちろん3試合、しかもサマーリーグで全てを評価することなどできないが、開幕時点でチームの信頼を勝ち取るには、ここからトレーニングキャンプ、プレシーズンで外からでも得点できることをアピールする必要があるだろう。

 一方の守備。ドラフトが終わると米各メディアが各チームのドラフト「勝ち組」「負け組」を報じるが、そこで「SB NATION」「NBCスポーツ」などいくつかが、守備力強化が必要なウィザーズが八村を指名したことで「負け組」と評価した。これはどちらかと言えば、ウィザーズのドラフト戦略を指しているようにも読み取れるが、八村のディフェンスが即戦力レベルではないということでもある。

 ウィザーズは、ジョン・ウォール、ブラッドリー・ビールというガードの二枚看板がいるが、ウォールが昨季にアキレス腱を断裂し来季の復帰時期が不明。昨季からメンバーが大きく変わり、現状ではビール以外にスタメンが確定している選手はいない。逆に言うと、八村はいきなり開幕スターターとしてルーキーシーズンを迎えることもあるわけだ。

 ドラフト1巡目指名が衝撃なら、ルーキーでの開幕スターターはさらなる衝撃。期待がどんどん膨らんでしまうのがファン心理だが、八村には先に挙げたウィークポイントを克服して、もっと我々を驚かせて欲しい。(文・田村一人)