――専門家が少なく、調整も難しい環境。メジャーでは、少しの投げミスがやはり命取りに?

 思っているよりもボールが速いとか、思っているよりもボールがこないとか、曲がるとか、バッターの想像を何らか少しずつ超えていかなきゃメジャーのバッターには通用しません。バッターにとって想像通り、腕の振り通りのボールになってしまうと長打にされてしまいます。

 ただし、これがバッターの対応速度、反応速度、反応の幅を超えるだけの特殊球だったりすると話は別です。例えば160キロを超えるボールがあるとか。

 牧田くんの場合はボールが浮き上がってくるわけですよね。他の投手にはない軌道ですし、メジャーで戦っていくのに絶対に必要な武器です。ただでさえフライボール革命の普及でフライを打ち上げようとしているので、とても有効です。でも調子が落ちてきて、フォームが少しずつ崩れてしまった。パッと見、分からない人にとっては何が違うのか分からないレベルの崩れですが、結果的にフライを打ちやすいボールになってしまうんだと思います。

――速球派ではない投手だと「間」の使い方が重要だといわれていますが?

 投球間隔の「間」をあえて遅くしたり、速くしたりするのは、日本のバッターだとすごく効果があるんですよね。一本足で打つバッターが多いですから。でもアメリカのバッターは、ほぼノーステップでバットのトップの位置もあまり変わらずに打ってくるので、そこまで効果がありません。

 極端な話、ソフトボールの打ち方に近いと思います。ためて打つんじゃなくて、バットを直線的に出して身体の強さで飛ばしてくる。そうすると、「間」を外してもあまり通用しないんですよね。

 僕も日米野球の時に、対戦したメジャーの選手に話を聞いたんですけど、僕がフォームをズラしたり、「間」をとるのはそもそも見てないっていうんです。

 ボールが手から離れてから反応しているので、僕が一生懸命足をあげようが、なかなか身体が前にいかないように粘っていこうが、その時にはまだ彼らは始動していない。そこからでも、スイングスピードが速いし、まして球が遅いと十分間に合ってしまうんです。

 よっぽどイライラさせたり、集中力をそぐ意味では多少効果はあるとは思いますが、日本のバッターほどは通じないでしょうね。

――牧田投手に期待することは?

 日本でも海外でもとにかく投げてくれてれば嬉しいです。希望としてはこれからもアメリカで続けてほしいと思っています。僕は達成できなかったので、ぜひ、必要とされるところで頑張ってほしいですね。

(構成/AERA dot.編集部・岡本直也)