ウルグアイ戦のスタメンから最も流動的なポジションはトップ下かもしれない。安部裕葵は前からのディフェンスや1タッチのパスなどで良く絡んでいたが、もう1つ決定的なシーンを生み出せなかった。

 その安部にしても、エクアドル戦がヒーローになるチャンスであることは久保と変わらない。安部本人はあまり他選手との比較を好まない選手で、そうした発言もしないが、エクアドル戦でのゴールやアシストといった結果がいかに重要かは認識しているはずであり、若くしてコパ・アメリカのメンバーに選ばれたアタッカーとして期待がかかる。

 ファイナルまで躍進したトゥーロン国際トーナメントを途中離脱してコパ・アメリカに合流した伊藤達哉はここまで出番を得られていないが、チリ戦の翌日、さらにウルグアイ戦の翌日とトレーニングに精力的に取り組んでおり、いつチャンスをもらっても自分の持ち味を出す準備はできている様子だ。

 1トップの上田綺世とチリ戦で右サイドに起用された前田大然は、ウルグアイ戦で前線から抜群の存在感を示した岡崎慎司のパフォーマンスを見て大いに触発されている。終盤に岡崎と2トップを組んだ上田は「やっぱり体の使い方とかもうまくて、おさまるし、すごい戦えていたし、おさめて動きなおしてという、オカさんのストロングはすごい出ていました」と認めながら、スタイルよりも「普段から世界で戦っている選手の姿」に刺激を受けて、次のチャンスに生かしたいと語っていた。

 前田も岡崎について「2点目なんて、ゴール前でニアに突っ込んでからのああいうのはボールがこなくても、ああいう動きをすることでスペースが空くと思う。ああいうところは見習わないといけない」と語っており、「FWで正直出たいですけど、どこのポジションで出るかも分からないですし、与えられたポジションで結果を残すしかない」と前向きに語っていた。

 エクアドル戦の前日会見に森保監督とともに出席した植田直通はディフェンスの選手として「4点、2点と来ているのでここはゼロで行きたい。点は攻撃陣が絶対に取ってくれると思うので」と語った。仮にゼロで抑えられたとしても勝ち上がるためにはゴールが必要になる。そのゴールを決めて誰が次のヒーローになるのか。チームとしての勝利に期待しながら注目したいポイントだ。(文・河治良幸)

●プロフィール
河治良幸
サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書は『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)、『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)など。Jリーグから欧州リーグ、代表戦まで、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHKスペシャル『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の"天才能"」に監修として参加。8月21日に『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)を刊行