こうした事情を踏まえ、昭和大学藤が丘病院脳神経内科准教授の馬場康彦医師が指摘する。

「パーキンソン病の治療法は極めて複雑であり、パーキンソン病を専門とする医師がいる病院を選んでほしい理由はそこにあります。脳深部刺激療法(DBS)などのデバイスを用いた治療法(DAT)は、適切な時期に受けないと、治療効果が十分にあらわれないおそれがあります。タイミングを逃さないためにも病気をよく理解した医師にかかることが大切です」

 DATの一つのDBSは脳内に電極を挿入し、胸部に埋め込んだ装置から電気刺激を送ることで神経細胞ネットワークの機能を調整する。もう一つは、患者に胃ろうをつくり、小腸まで進めたチューブにゲル状の薬剤を小型ポンプで持続注入する「デュオドーパ」である。

 DBSとデュオドーパは対象となる患者に大きな違いはない。

 デュオドーパは薬剤のカセットのセットなどが自分でできる、あるいは家族の協力でできる患者に向いているのに対して、DBSはそれほど患者の手間はかからない。しかし、“脳に埋め込む”という手術に抵抗のある患者は珍しくない。

 DBSについて、馬場医師は次のようにアドバイスする。

「DBSは術後の機器の調整と薬物療法の組み合わせが非常に重要なため、両方の治療を同じ医師に担当してもらえるか、別の医師になるなら連携がとれているかを尋ねるとよいでしょう」

 パーキンソン病の専門医は、現在、学会などでは明確にされていない。パーキンソン病を診る医師の多くは脳神経内科などに所属し、他の疾患も診ながら診療している。両医師が口をそろえるのは「脳神経内科医」のなかでも、パーキンソン病の治療を得意としている医師に診てもらうことの重要性である。

「パーキンソン病を専門とする医師の数は十分ではなく、地域によっては特定の病院に患者さんが集中せざるを得ないのが実情ではないでしょうか」

 柴山医師はこのように前置きしたうえで、「総患者数」の目安として、医師1人で40~50人を担当、医師は2人以上いることが望まれ、病院全体で年間100人以上との数値を挙げる。

 ただし、総患者数は多いほどいいとは言いきれない。

「パーキンソン病は、患者さんの訴えが多く、多様であることから医師は丁寧に聞くことが求められます」(馬場医師)

 患者一人ひとりを丁寧に診察するには、医師1人の1日の診察患者数は30人が上限だという。

○取材協力
亀田総合病院 脳神経内科部長代理
柴山秀博医師

昭和大学藤が丘病院 脳神経内科准教授
馬場康彦医師

(文・近藤昭彦)

※週刊朝日ムック「手術数でわかるいい病院2019」から