麻疹が予防接種を受けた人が多い地域に持ち込まれた場合、発生は起きないか、小規模の流行で終息します。しかし、予防接種を受けていない人が多い地域にいったん入ると、麻疹のまん延を抑制することは困難になってしまいます。

 特に、ニューヨークでの麻疹の集団発生の一因となっている重要な要因には、麻疹やおたふく、風疹のワクチンの安全性に関する誤報が挙げられています。ワクチンに関する不正確で誤解を招く情報を流すことによって、コミュニティーを意図的に標的にし、ワクチン接種率を下げるように仕向けている組織もいくつか存在しているようです。

 米国ジョージア州のエモリー大学のPhadke氏らは、米国で麻疹の排除が宣言された2000年以降、麻疹発症者の半数近く(41.8%)は宗教や信条などに基づく医学的ではない理由によるワクチン拒否に起因することが示されたと報告しています。

 しかし、この反ワクチン運動の広がりと悪化の一途をたどる麻疹の大流行を受け、6月13日、ニューヨーク州議会では、宗教上の理由で親が子どもへのワクチン接種を拒否できる免除規定を廃止する法案が、ついに可決されました。

 世界保健機関(WHO)も、2019年4月、2018年の最初の3ヶ月と比較して、世界で麻疹の症例数が300%も増加したと報告しています。いずれにせよ、予防接種率の低下が最も大きな要因なのです。

■国内では風疹の流行もいまだ衰えず

 一方で、昨年、首都圏を中心に流行した風疹。覚えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。昨年の風疹報告数は2,917人でしたが、今年は6月1日までにすでに1,624人の風疹の罹患(りかん)が報告されています。

 平成28年度の感染症流行予測調査によると、30代後半から50代の日本人男性の5人に1人、20代から30代前半の10人に1人は、風疹の免疫を持っていないことがわかっており、こうした免疫を持っていない世代を中心に流行は続いているのです。

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抗体価の確認は省けないのか