副部長の石橋智尋さん(3年)の入部のきっかけは、先輩から「キノコを一緒に採りに行ってみない?」と誘われたことだ。「情熱的な部活ならきついな」と思ったが、穏やかな雰囲気の活動にひかれた。「見たことのないキノコを見つけるとうれしくなります」。関口高雄さん(3年)はもともと将棋部に入ろうと思っていたが、キノコ部という珍しさに興味がわいたという。

「中学生のころから有毒生物が好きだったから」という女子部員(2年)もいる。彼女の好きなキノコは猛毒のドクササコ。誤食すると指先がやけどのようにはれ、1カ月ほど痛むという危険なキノコだ。弦楽部でバイオリンをやろうと思っていたが、「癒やされたい」とキノコ部に入った女子部員(2年)もいる。キノコにはまるきっかけは、人それぞれのようだ。

「六甲山でいろいろな種類のキノコが見られるということは、それだけ森林環境が豊かだということ。キノコを通して環境保全を啓発していくのが、キノコ部の目標です」と河合主幹教諭。部員たちが生き生きと、楽しそうにキノコ部の活動に取り組んでいるのを見ると、うれしくなるという。

 キノコ部の生徒たちがこれまでに集めたキノコは、19年5月末まで、兵庫県立人と自然の博物館で開催中の「六甲山のキノコ展2019」で展示されている。「美味」「不食」「猛毒」などと分類し、季節ごとに並べた600種類のキノコの標本や、約100点の写真が並ぶほか、悪臭を放つスッポンタケや、メープルシロップのような香りのニオイワチチタケなど4種類のキノコの香りを比べられるコーナー、キノコの種類と気温、降水量の関係を調べた研究成果など、キノコを満喫できる内容だ。

 野中さんは、キノコの魅力を「多様性。形やにおいだけでなく、木に生えているのか、地面から生えているのかも違う。色も赤や白、茶色、紫、青色と様々」と語る。「キノコ展を見て、キノコの多様性やキノコ部の活動について知ってもらいたい」

 河合主幹教諭によると、キノコの歌を作ったり、アクセサリーを制作したり、特別なキノコで料理を作ったりと、愛好家たちは自由にキノコにアプローチしているそうだ。不思議で魅力的なキノコの世界は、どこまでも広がっている。(ライター・南文枝)