夜中に仕事をすることもなくなった。仕事を辞めてほしいと言った娘は5歳になり、「かじだいこう(家事代行)」という言葉を覚え、いまの会社が好きだと話す。

「ママはこんな仕事をしているんだよ、と娘に胸を張って言える仕事をしていたい」

 立教大の中原淳教授とトーマツイノベーションが2017年3月に、小学生以下の第1子を持つ共働きの母親500人にネットで調査したところ、「仕事と育児の両立がうまくできている」と答えたのは、36.8%だった。

 多くの企業は短時間勤務や在宅勤務などの制度を設けているが、働く母親の大半は、うまく両立ができずに悩んでいる。

 中原教授は「制度はすぐに変えられるが、働く人の意識はすぐには変わらない。働き方が多様になる中で、労働時間の長さが重視されてきた昭和時代の考えをアンインストールしなければならない」と話す。

 いまは、多様な働き方に対する世代間の意識のずれによって摩擦が起きているとして、「平成の時代は過渡期だ」と言う。

 そうした意識を変え、さまざまな事情を抱えている人たちが、働きやすい社会を作るためにはどうしたら良いのか。

 中原教授は、企業が多様な働き方を認めていくこととともに、管理職のマネジメント力を強化する必要があると指摘する。

「働いた時間ではなく、働き方に応じた仕事の成果や成長を丁寧に見て人材を評価しなければならない」

 ただ、多様な働き方に合わせた評価方法が定まっておらず、悩んでいる管理職も少なくないといい、「給与を含めた適切な処遇に加え、働き方改革に対応した管理職の育成が重要だ」と話す。(朝日新聞記者・篠健一郎)