大:他人に期待していないということですか?

ひろ:説明をして理解してもらえたら、よかったとは思いますけど、理解してもらえなくても当たり前。ゼロのままでマイナスにはなりません。

僕の通っていた中学校には、先輩が登校してきた男子生徒をひとり1発ずつ殴るという日がありました。でもその時も、「そういう社会なんだ」という気持ちが割とありました。雨が降って濡れたからと言って、怒っても仕方ないじゃないじゃないですか。逆に人生が思い通りになると思う人って、そんなに思い通りの人生を歩んできたのかと不思議に思っちゃいます。

大:がんばれば、きっと思い通りになるとどこかで思っているから、つらいと感じるのかもしれません。

ひろ:「がんばれば思い通りになった」という経験が誤解のもとです。「がんばって思い通りにならなかった」ことのほうが、世の中多いと思いますよ。

■思い込みを捨てれば嫉妬せずにすむ

大:がんばって成功した、優秀な人に嫉妬することはありますか?

ひろ:ゲームしている時にはありますけどね。指が思った通りに動く人がいるんですが、僕はそこまで動かないんですよ。それは訓練によるという説と、遺伝によるという説があって、とにかく僕はあまりうまくないですね。

日常では「木村拓哉の顔に生まれたかった」とか、いろんな希望はあるのかもしれませんが、そもそも最初から僕の手に入るものだと思っていません。「アラブの石油王の息子が豹を買いました」というニュースを見たときと同じで、「そういう生き方があるんだ。へえ」という感じです。

大:SNSで嫉妬したり・されたりという経験を持つ人も多いですね。

ひろ:みんな嫉妬の対象がズレていると思います。例えば生まれたときから何もしなくても年間数億円が入ってくるような政治家もいる。でもそういう人にではなく、みんなIT企業の社長さんとかに嫉妬するじゃないですか。自分で一生懸命働いて、会社を作って上場させたような人に。フランスではお金持ちはクラスがちがうので、「あっちはあっちの人」と切り捨てている。そっちのほうがわかりやすい気もしますけどね。

(構成/松田明子)