──どうしてでしょう。

 それはここでは言えないなあ(会場笑)。最低50歳までって本当に思っていたし、それは叶わずで、有言不実行な男になってしまったわけですし。その表現をしてこなかったらここまでできなかったかもなという思いもあります。だから、言葉にすること、難しいかもしれないけど言葉にして表現するというのは、目標に近づく一つの方法ではないかなと思います。

──野球に費やしてきた膨大な時間、これからそういう膨大な時間とどういう風に付き合いますか。

 これからの膨大な時間ということですか。それとも、これからの膨大な時間とどう付き合うかということですか。

──これからの膨大な時間をということです。

 ちょっと今はわからないですね。ただ、たぶん明日もトレーニングをしていますよ。それは変わらないでしょうね。僕はじっとしていられないから。動き回っているでしょうね。だからゆっくりしたいとか全然ないですよ。全然ない。たぶん動き回ってます。

──イチロー選手の生き様でファンの方に伝わっていたらうれしいということはありますか。

 生き様というのは僕にはよくわからないですけど、生き方と考えれば、さきほどもお話しましたけれども、人より頑張ることなんてとてもできないんですよね。

 あくまで測りは自分の中にある。それで自分なりにその測りを使いながら、自分の限界を見ながらちょっと超えていくということを繰り返していく。そうすると、いつの間にかこんな自分になっているんだという状態になって。

 だから少しずつの積み重ねが、それでしか自分を超えていけないと思うんですよね。一気に高みに行こうとすると、今の自分の状態とギャップがありすぎて、それは続けられないと僕は考えているので。地道に進むしかない。進むというか、進むだけではないですね。後退もしながら、あるときは後退しかしない時期もあると思うので。でも、自分がやると決めたことを信じてやっていく。

 でも、それが正解とは限らないわけですよね。間違ったことを続けてしまっていることもあるんですけど。でも、そうやって遠回りをすることでしか本当の自分に出会えないというか、そんな気がしているので。そうやって自分なりに重ねてきたことを、今日のゲーム後のファンの方の気持ちですよね。ひょっとしたらそんなところを見ていただいていたのかなと。それはうれしかったです。そうであればうれしいし、そうじゃなくてもうれしいです。あれは。

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