仕事でお客さんからのクレームを受ければ、どんなに理不尽な内容であっても真摯に応対する。相手が大事なパートナーや家族であれば、どんなグチでもやさしく耳を傾けてあげるべきだ。

 上記は2つとも、基本的には正しい話です。しかし一方で、頭では理解できても、どうも気持ちがついていかないという人もいるでしょう。

「そもそも相手の言っていることが間違っている。そんな話を聞く必要があるのか?」「こっちは忙しいのに、なぜそこまでして相手の話に時間をさかなければならないのか」そういった思いがつい浮かんでしまい、うまく聞けない。そんな人は、もしかしたら「自分のことを認められていない」という別の問題があるかもしれません。

『1分で信頼を引き寄せる「魔法の聞き方」』の著者、渡辺直樹氏は、大手通信会社のコールセンター業務に20年携わる傍ら、臨床心理学や心理カウンセリングを学び、傾聴のボランティアなども行う、いわば「聞くこと」のプロフェッショナル。そんな渡辺氏に、本当の「聞き上手」になるための秘訣について聞きました。

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 相手の話を共感をもって聞き、相手を認めてあげるためには、実は、自分を認めてあげること、つまり「自己肯定」が必要です。

 話を聞くことと、自己肯定感との間にいったい何の関係があるのか? すぐには2つが結びつかないかもしれません。

 私は、聞くことを専門にする仕事に携わって20年以上になります。その間、聞き方や「傾聴」についての数多くの入門書や実用書が絶えず出版され、人の話をうまく聞くためのテクニックや心構えは、繰り返し語られてきたと思います。私もその多くに目を通してきました。

 そういったノウハウを否定するつもりはまったくありません。ですが、そのような本がいくら売れても、周囲に「聞き上手」の人が増えたようには思えないのです。

 それはなぜなのでしょうか。

「聞く」ということには大きく分けて、次の3つの聞き方があると考えます。

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3つの聞き方とは?