なぜ、幼い命は救えなかったのか──。千葉県野田市で小学4年生の栗原心愛さん(10)が、父親の栗原勇一郎容疑者(41)による虐待で死亡した事件で5日、心愛さんが勇一郎容疑者に「お父さんに叩かれたのはウソ」という手紙を書かされていたことがわかった。児童相談所の職員は、手紙を見た後、心愛さんの保護を解除していた。千葉県柏児童相談所の二瓶一嗣所長が、千葉県庁で開いた会見で明らかにした。
【心愛さんが父親からの虐待の事実を訴えた小学校のアンケート】
二瓶所長によると、児童相談所の職員3人が「ウソの手紙」を見せられたのは昨年2月26日。当時、親族宅で生活していた心愛さんを職員3人が訪問。その時、心愛さんの署名付きの手紙を見せられた。そこには<お父さんにたたかれたということは、ウソ><児童相談所の人にはもう会いたくないのでこないでください>などと書かれていた。
これに対して職員は同月28日、対応方針を決める会議を開催。職員間の議論を経て、心愛さんを勇一郎容疑者と母親の栗原なぎさ容疑者(31)の住む家に戻すことを決定した。
ただ、手紙の内容を不審に思ったのか、職員は3月19日に心愛さんが通う小学校を訪問していた。
実は、ここでも心愛さんはSOSを発していた。心愛さんは手紙の内容について、勇一郎容疑者がメールで母親の栗原なぎさ容疑者(31)で指示し、心愛さんがその通り書き写したことを認めていた。内容がウソであると大人たちに伝えていたのだ。
ところが、ここでも心愛さんが助けられることはなかった。職員が「じゃあ、そこに書いてあったのは(心愛さんの)気持ちとは違う感じ?」とたずねると、心愛さんが「お父さんとお母さんに早く会いたい、一緒に暮らしたいと思っていたのは本当のこと」と回答したため、心愛さんが保護されることはなかった。
心愛さんが発したSOSは過去にもあった。2017年11月には小学校が実施したいじめのアンケートで、勇一郎容疑者から暴力を受けていたことを訴え「先生、どうにかできませんか」と書いていた。ところが、その内容について市の教育委員会は、勇一郎容疑者の脅しに屈してコピーを渡していた。その時も、勇一郎容疑者は子供の字で書かれたような「同意書」を持参していたという。