大会前に中島翔哉が離脱した状況で、右サイドの堂安がチャンスの起点としても重要な役割を担い、しかも2得点と結果を出している状況で、なかなか伊東にチャンスが来ないのも仕方ない部分はある。それでもオマーン戦では少ない時間の中でもシュートまで持ち込み、サウジアラビア戦では決定的なチャンスになりかけたところでイエローカード覚悟のファウルに阻まれた。

 サウジアラビア戦から中2日のベトナム戦では、堂安がイエローカードを1枚もらっていたこともあり、伊東のスタメンを予想するメディアも少なくなかっただけに、出場機会の少なさは現状の立場を物語っているかもしれない。「チャンスをもらえれば結果を残す自信はある」と強調する伊東は引いて守備を固める相手よりも、どちらかといえば攻守の切り替わりが多く発生する試合で持ち味を発揮できる。ここからはそういう相手しかいない。

 引き続き右サイドは堂安のスタメンが予想されるが、より縦の突破や飛び出しがストロングポイントであることを自負するサイドアタッカーが勝負どころで投入されれば、全体が縦に間延びする状況では相手ディフェンスの脅威になりうるだけに、そこからいかに危険なフィニッシュに持ち込んで仕留められるか。準決勝あるいは決勝が終盤勝負になれば劇的なゴールで日本を勝利に導く、救世主的な存在になるポテンシャルは十分に備えている。(文・河治良幸)

●プロフィール
河治良幸
サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書は『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)、『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)など。Jリーグから欧州リーグ、代表戦まで、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHKスペシャル『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の"天才能"」に監修として参加。8月21日に『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)を刊行。