―タツノコプロは17年に創立55周年を迎えました。新作の予定はありますか?

桑原 弊社の目標は二つあります。一つは「ハクション大魔王」のように所有する作品を現代によみがえらせること。もう一つは吉田竜夫の精神を引き継いで、新しい作品を生み出すことです。どちらか一方に偏ってはいけないと考えていますが、二つ目はとても難しいんです。「ハクション大魔王」や「ガッチャマン」のような時代を超えて愛される作品を世に送り出したいと常に願っていますが、そのためには天才が必要なんです。

―天才ですか?

桑原 はい。弊社の作品の歴史を振り返っても、天才の必要性については明らかです。「ハクション大魔王」「昆虫物語みなしごハッチ」「科学忍者隊ガッチャマン」などの人気アニメにはすべて吉田竜夫が関わっています。吉田竜夫は、「タイムボカンシリーズ ヤッターマン」のテレビ放送が開始された1977年に亡くなるのですが、吉田没後の作品と比較すると、やはり作品が持つ力に少なからず違いがあります。ですから我々だけでなくアニメ業界の全ての人間が天才を探しているんです。

―現代の日本アニメは海外に輸出され、世界中で高い評価を得るようになりました。それでもまだ天才が必要なんでしょうか?

桑原 「国民的なアニメをつくる」、それ以上の「世界的なアニメをつくる」という点においては、絶対に圧倒的な才能の持ち主が必要です。スタジオジブリの宮崎駿監督はもちろん、「君の名は。」の新海誠監督や「バケモノの子」の細田守監督のような方々を探さなければなりません。確かに日本のアニメは世界から高い評価を得られるようになりましたが、そうした天才を常に発掘し続けないと、数十年後には衰退しているかもしれないのです。

―今後について教えてください。

桑原 我々には長い間愛され続けてきた作品を、きちんとした形で現代によみがえらせる責任があると思います。そのために、原作の著作権を所有しているという強みをいかして、みなさんがちょっと驚くような試みを考えています。「ハクション大魔王」は、もともとテレビアニメで出発した作品です。現段階ではあまり詳しく話せませんが、新しい「ハクション大魔王」のアニメについても検討中です。さまざまなプラットフォームで活躍するハクション大魔王ファミリーをこれからもよろしくお願いします。

※「ハクション大魔王」とは……
1969年から70年までの約1年間放送(全104話)されたテレビアニメ。くしゃみをすると魔法の壺から飛び出すハクション大魔王は、呼び出した者の願いを叶える魔人。壺の持ち主となった小学生のカンちゃんと失敗ばかりするドジな魔王のドタバタギャグコメディー。2013年にはフジテレビ系で実写ドラマ化された。

(構成・竹内良介)