南海ホークス、阪神タイガースでの活躍はもちろん、引退後の解説などでもおなじみ、江本孟紀さん(撮影/写真部・小原雄輝)
南海ホークス、阪神タイガースでの活躍はもちろん、引退後の解説などでもおなじみ、江本孟紀さん(撮影/写真部・小原雄輝)

『幸運な男-伊藤智仁 悲運のエースの幸福な人生』など、多くの野球本を手がける長谷川晶一さん(撮影/写真部・小原雄輝)
『幸運な男-伊藤智仁 悲運のエースの幸福な人生』など、多くの野球本を手がける長谷川晶一さん(撮影/写真部・小原雄輝)

2018年12月6日、渋谷大盛堂書店にて開かれたイベント(撮影/写真部・小原雄輝)
2018年12月6日、渋谷大盛堂書店にて開かれたイベント(撮影/写真部・小原雄輝)

 累計400万部の大ベストセラー『プロ野球を10倍楽しく見る方法』(KKベストセラーズ)の著者であり、『変革の檄文! プロ野球を100倍楽しくする方法』(徳間書店)を上梓したばかりの球界のレジェンド・江本孟紀さん。そんな「文系野球」の大レジェンドと、古今東西野球に関する奇書を編纂(へんさん)した『プロ野球バカ本』(朝日新聞出版)を発行した長谷川晶一が初セッション。長谷川が、野球本の未来を語った江本さんとの一夜を振り返る。

【トークイベントでの江本さん、長谷川さんはこちら】

*  *  *

 子どもの頃から、プロ野球と読書が大好きで、「好き」が昂じた結果、僕は野球について書くことが多い物書きとなり、少年時代から中年時代の現在に至るまで、多くの「プロ野球本」を読む人生を過ごしている。もちろん、すべての作品が高尚なもの、感動的なものばかりではなく、中には驚くほど下世話なもの、バカバカしいものもある。しかし、それすらも愛おしく、僕はこうした作品たちを「プロ野球バカ本」と名づけて愛読してきた。

 今でも、多くの「プロ野球バカ本」に囲まれた生活を送っているけれど、もしも「歴代ベストワンを選べ!」と問われたならば、僕は迷うことなく『プロ野球を10倍楽しく見る方法』を挙げることだろう。この本が発売された1982(昭和57)年当時、僕は小学校に通う12歳の少年だったが、発売と同時にすぐに購入し、むさぼるように読んだことを今でもハッキリと覚えている。

 以来、江本さんは「文系野球界のレジェンド」として、僕の中に君臨している。なぜなら、江本さんは、80年代から始まり、90年代、00年代、そして10年代と常に話題作を出版し続けているからだ! 特に今年の江本さんはすごかった。思わず嫉妬してしまうほど怒とうの出版ラッシュだった。

 3月には『僕しか知らない星野仙一』(カンゼン)で、この1月に亡くなったばかりの星野さんとの思い出を披露し、4月には『野球バカは死なず』(文春新書)で、自身の半生を赤裸々につづった。さらに9月には、あの名著を完全復活させた『プロ野球を100倍楽しくする方法』で、相変わらずの舌鋒(ぜっぽう)の鋭さを見せているのだ! 「投げる」「打つ」に加えて、「読む」という野球の魅力を確立した男、それがエモやんなのである!

■プロ野球の新たな魅力を伝えるために

 そして、ついに12月6日、僕は江本さんと感動の初対面を果たす。僕が所蔵している多くの「プロ野球バカ本」に好き勝手に突っ込みを入れた拙著『プロ野球バカ本 まったく役に立たないブックレビュー』の刊行記念トークイベントのゲストに江本さんをお招きしたのだ。

 この本では、コンプライアンスを度外視した偉大な選手たちの「レジェンドバカ本」、夫を支える妻や家族の愛の姿を描いた「夫婦バカ本」、若手選手たちの青臭い恋愛観や人生観がつづられた「若気のバカ本」、あるいは僕自身で自著を真面目に評論する「長谷川バカ本」など、ボールの縫い目と煩悩にちなんで、全部で108冊の本を紹介しているが、もちろん、この中には江本さんの本も含まれている。

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江本さんはダンディーだった?