ソフトバンク・工藤監督 (c)朝日新聞社
ソフトバンク・工藤監督 (c)朝日新聞社

 2018年もさまざまな出来事があったプロ野球。華々しいニュースの陰でクスッと笑えるニュースもたくさんあった。「プロ野球B級ニュース事件簿」シリーズ(日刊スポーツ出版)の著者であるライターの久保田龍雄氏に2018年シーズンの“B級ニュース”を振り返ってもらった。今回は今年から導入された「リクエスト制度」をめぐる珍事編である。

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 これまで外野フェンスやポール際の打球、危険なスライディングなどのケースに限定されていたリプレー検証が、アウトやセーフ、フェア、ファウルの判定にも広く適用されることになった。4月4日のソフトバンクvs西武(メットライフドーム)では、この新ルールが思わぬ珍事をもたらした。

 西武の先発・カスティーヨの前に1人の走者も出すことができないソフトバンクは0対2とリードされた6回1死、上林誠知が一ゴロで果敢にヘッドスライディングを試みたが、名幸一明一塁塁審の判定は「アウト!」。

 これで初回から17人連続アウトと思われた直後、「あれはどう見てもセーフと思った」という工藤公康監督が自身初リクエストを行使する(導入後のリクエスト第1号は、3月30日の巨人・高橋由伸監督)。

 そして、リプレー検証の結果、一ゴロは内野安打に覆り、パーフェクトを阻止。ヘッスラが功を奏した上林は「執念っすよ!」と胸を張った。

 前年までなら判定はアウトのままで、パーフェクトも継続していただけに、まさに新ルール様様だった。

 ファウル→ホームラン→ファウルの二転三転劇が、前代未聞の再試合要求にまで発展したのが6月22日のソフトバンクvsオリックス(ほっともっと神戸)。

 3対3の延長10回、ソフトバンクは2死一塁で中村晃がファウルで粘った末、近藤大亮の9球目を右翼ポール際に運んだ。

 打った中村自身「ファウルだと思っていた」というほど微妙な打球で、坂井遼太郎一塁塁審の判定も「ファウル!」。にもかかわらず、工藤公康監督はコーチ陣の進言を受け、リクエストを要求した。

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久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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