勝敗の分かれ目になる重要な場面とあって、「ダメもとでリクエストしてみよう」ということだったのだが、約5分後、なんと判定は「ホームラン」に覆る。そして、この2ランでソフトバンクが5対3で勝った。

 だが試合後、“疑惑の判定”をめぐって、事態は紛糾する。怒り心頭のオリックス・福良淳一監督は「誰が見てもファウル。しっかり見てくれよ!」と審判団に詰め寄り、長村裕之球団本部長も「リクエストで間違えたら(導入の)意味がない」と猛抗議。

 これに対し、審判側は「映像を見て確認した」と主張し、「ファウル」「ホームラン」の堂々巡りは約20分にわたって続いた。

 その後、球場の審判員室で長村本部長と福良監督も交えてリプレー検証の確認作業を行ったところ、佐々木昌信責任審判は「当初はポールに(打球が)隠れたように見えたので本塁打としたが、後で(コマ送りなどで)見たところ、ボールの前に白いものが見えた。判定が正確ではなかった」と初めて誤審を認めた。

 だが、すでに試合は成立しているため、本塁打の記録は訂正できない。ファウルをホームランにされて試合にも負けたオリックスとしては、当然納得できない。翌23日、「リーグ全体の順位に大きな影響を及ぼす可能性がある」とNPBに対し、異例の延長10回2死一塁から再試合を要求したが、「誤審は認めたが、本塁打の裁定は最終的なもの。野球規則に基づいて、続行試合はしない」(仲野和男パ・リーグ統括)と却下された。

 ルールを曲げられないことはわかっていても、なんとも後味の悪い事件だった。

 隠し球を成功させたと思ったら、“証拠不十分”でセーフという玉虫色の決着になったのが、8月14日の巨人vsヤクルト(神宮)。

 3対0とリードのヤクルトは5回1死一塁、山田哲人が左前安打。一塁走者の坂口智隆は二塁ベースを回ったが、レフト・亀井善行が二塁に返球するのを見て、悠々セーフのタイミングで帰塁した。

 ところが、ボールを持ったセカンド・マルティネスが、マウンドの内海哲也に返球したと見せかけるトリックプレーで、再び坂口にタッチ。完全に不意をつかれた坂口は、慌ててベースを踏み直したが、その際に一瞬体が浮いたようにも見えた。しかし、森健次郎二塁塁審の判定は「セーフ!」。

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長い中断にファンは困惑