ママ友のAちゃんが、

「夫が全く子育てを手伝わない。こないだ風呂に入る間だけ見ててもらったら、子供が泣き出して、あやしたりもせずに、そのまま抱えて風呂まで連れてきて差し出された」

 と愚痴った時、その瞳には殺意が滲んでいた!

 その後、二人目を妊娠した時にAちゃんは体調を崩して長期入院。

 その間、旦那は子供の面倒を見ざるを得ない状況となり、その後子育てに参加するようになった。

 今では家庭円満だ。

「子供抱えながら仕事して大変だね」と、よく言っていただくが、私は断言したい。

 専業主婦の方が絶対に大変だ。

 どんなに可愛い我が子でも、一人で不安を抱えながら、毎日睡眠不足で逃げ場もなく向き合っていたら(特に最初の2カ月は家から出られないからね)、可愛いものも可愛いと思える余裕すらなくなる。

 私は煮詰まった時、夫がチビを抱いて「可愛いねー」と言うとハッとさせられる。

「なんで泣きやまないんだろう(焦!!)」
「なんで食べてくれないんだろう(泣!!)」
「早くオムツ替えなきゃ、風呂に入れなきゃ!」

 と煮詰まっている時、私は、全然チビの顔を見ていない。

 ご飯を運ぶ口元、オムツを替える手元、そういうパーツしか視界に入ってこなくなっていて、チビの可愛い顔を見逃しているのだ。

 それに気づかされる。

 夫の抱っこするチビを、少し離れて客観的に見ることで、ふっと気持ちが落ち着くのである。

 これがどれほどありがたいことか。

 母が子を育てるのは確かに当たり前かもしれない。

 でも、母親が一人で全て背負い込むのは当たり前じゃない。

 アフリカでは、「一人の子を育てるのに100人の村民の力がいる」と言うらしい。

 私は私の周りの共同体の力をフルに借りてやっている。

 夫、母、義母、弟、義妹、保育園。

 保育園のママ友やクラスメイトや先生たちも数えたら、100人近くの人の手を借りていることになる。

 それでも、毎日満身創痍だ。

 そして少し離れている時間に我が子可愛さは募る。

 それでまた頑張れる。

 さて、書けた。チビを迎えに行こうっと!

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水野美紀

水野美紀

水野美紀(みずの・みき)1974年、三重県出身。女優。1987年にデビュー。以後、フジテレビ系ドラマ・映画『踊る大捜査線』シリーズをはじめ、映画、テレビドラマ、CMなど、数多くの作品に出演。最近では、舞台やエッセイの執筆を手掛けるなど、活動の幅を広げている。2016年に結婚、2017年に第一子の出産を発表した

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