ニューエリートは学習主義で、組織内での出世よりも社会へのインパクトや貢献を望んでいます。なので、よくないマネジャーのチームに入ったメンバーは、すぐに配置転換を希望して人事に文句を言う。「自分の生きたい人生や自分のやりたいことをサポートしてくれないんだったら、どこか違うところに行こう」というわけですね。それがごく普通であって、集合知を重視するボトムアップのリーダーシップでなければ、チームにメンバーが集まらなくなっています。

 計画主義で、ステータスを望むオールドエリートにありがちなトップダウンのリーダーシップ(黙ってオレについてこい)というのは、もはや通用しなくなっているのです。

 グーグルの元人事トップで、ベストセラーの『ワーク・ルールズ!』(東洋経済新報社)を書いたラズロ・ボックの人事戦略には、「世界のためにリーダーを育てよう」「グーグルを辞めてもいい、偉いことをやってもらいたい」という発想が見て取れました。ニューエリート的な人材は内向きになるほど離れていくということをよくわかっていたのです。

 残念ながら日本の大手企業では、組織のモビリティー(流動性)は限られています。「とりあえず既存のチームに入って辛抱しなさい」という感じで、かなり内向き。なので、まだまだ「我慢して頑張ろう」と思っているビジネスパーソンが多いようです。

 けれどもよく見ると、ずいぶん価値観が変わってきていて、とくに若手社員の場合、上司がサポーティブでないとさっさと辞めてしまうケースが増えていると感じます。

 どうしたら若手社員が定着するのか。日本の大手企業で問題なのは、マネジャーがメンバーに対して「あなたは何をやりたいの?」という質問をほとんどしていないことだと思います。

 メンバーのやりたいことがわかっていれば、たとえば「適材適所でこのチームに入ってもらったんだけど、いま苦労しているんだったら、ちょっと話しましょう」と、人事の担当者にも入ってもらって、建設的に「ここは向いていないからこのチームに行ってみない?」などと提案できるはずです。

「それをやりたいなら、このスキルやポジションが必要ですね。そのためには1年半くらい頑張って成果を出して、四半期ごとのゴール設定もちゃんと達成しましょう」というような、やりたいことから逆算したレベルを引き上げるコーチングもできるでしょう。

(構成/高橋和彦)