特に幼稚園から小学校くらいのお子さんはVRのゴーグル自体にも興味を持って、「これは何?」「つけてみたい!」と積極的です。ゴーグルをつけてしまえば処置の様子も見なくて済みますし、子どもの気をそらすにはぴったりのツールだと感じました。広く使われるようになるのはもう少し先かもしれませんが、日本でも、すでに歯科医院等で試験的に使われているようです。

■注射のときに子どもにかけてあげたい「言葉」

 とはいえ、低月齢の赤ちゃんだと、注意をそらすのは難しいことがあるかもしれません。実は、6カ月までの赤ちゃんには砂糖水やおしゃぶりも有効と言われています。

 2003年のピッツバーグ大学の研究では、予防接種を受ける生後2カ月の赤ちゃんを2グループに分け、一方のグループのみ、注射の2分前に25%の砂糖水を与え、注射の間は親が抱っこしておしゃぶりをくわえさせました。すると、何もしていないグループは最初に57.5秒間泣き続けたのに対し、砂糖水やおしゃぶりを使用したグループは19秒でした。処置の直前に25%砂糖水を2ml程度飲ませたり、砂糖水をつけたおしゃぶりをくわえさせたりすると良いかもしれません。

 子どもへの声かけは、どんな内容がいいでしょうか。

 1989年に発表されたアラバマ大学の研究では、23人の子どもが骨髄穿刺や腰椎穿刺を受ける際の会話を録音し、声かけの内容によって子どもの反応がどう変わるかを調べました。すると、「大丈夫、心配することはないよ」といった安心させようとする言葉や、「赤ちゃんみたいに泣くのね」などの批判は、子どもの苦痛につながることがわかりました。一方で、「今日は学校で何をしたの?」と気をそらしたり、終わった後に「じっとしていて偉かったね」と具体的にほめたりするのが良いようです。

 また、小学生以上の子どもでは、処置の内容や、処置を受けることでどんな感覚がするかについて、具体的に説明することも大切です。注射や採血などの小さな処置であれば、当日になってから説明することで不安を最小限にすることができます。

 いかがでしょうか? 予防接種や注射などの処置は、親にとっても不安なものだと思います。年齢ごとに適した対処方法を知って、自信を持って対応することが、お母さんお父さんご自身や、お子さんのストレス軽減につながりますよ。

◯森田麻里子(もりた・まりこ)
1987年生まれ。東京都出身。医師。2012年東京大学医学部医学科卒業。12年亀田総合病院にて初期研修を経て14年仙台厚生病院麻酔科。16年南相馬市立総合病院麻酔科に勤務。17年3月に第一子を出産。小児睡眠コンサルタント。Child Health Laboratory代表

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森田麻里子

森田麻里子

森田麻里子(もりた・まりこ)/1987年生まれ。東京都出身。医師。2012年東京大学医学部医学科卒業。12年亀田総合病院にて初期研修を経て14年仙台厚生病院麻酔科。16年南相馬市立総合病院麻酔科に勤務。17年3月に第一子を出産し、19年9月より昭和大学病院附属東病院睡眠医療センターにて非常勤勤務。小児睡眠コンサルタント。Child Health Laboratory代表

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