実は、復帰の流れが決まり、前説をする10日ほど前に本人と2人だけで3時間ほど話をした。その時には僕と2人きりということもあって、芸人としての矜持を前面に出した物言いをする部分もあった。復帰後の記者との質疑応答でも、何かしら芸人らしいぶっ飛んだ物言いや行動をしないと、大事な何かを失ってしまうのではないか。そんな思いから、世間からしたらエキセントリック、もしくは不謹慎と思われるような振る舞いを何パターンも考えていた。その姿こそが“芸に真面目な男”をくっきりと映し出してもいた。

 結果的に、復帰の流れを作ってくれた先輩や仲間のアドバイスもあり“芸に真面目な受け答え”は一つのパターンも日の目を見ることはなかった。汗をかきながら、真摯に反省の弁を述べるという至極まっとうな形に行きついたが、この文脈にこそ、芸人・ガリガリガリクソンの本質を見た思いがした。世間的な正解とイコールかどうかはさておいた上で。

 今後はテレビなどメディアでの活動は厳しいと言わざるをえない。本人もそれは理解していて、SNSで発信し、自分のことを求めるファンが集うライブを中心に活動を展開していく予定だと聞いている。

 昨年の逮捕翌日、ガリクソンも出演予定だったイベント「悪いWARAI~ゴシップについて語ろうか?人生アクシデントだらけ~」が奇しくも今回の復帰舞台となった京都・よしもと祇園花月で行われた。

 このイベントには僕も出演しており、手前味噌な物言いにもなってしまうが、本当に盛り上がった。来るはずだった人間が来ていない。その状況の中、観客の皆さんに満足してもらうため、出演者全員がいつも以上に力を振り絞って盛り上げた。是非とも、ガリクソンにはこの日のイベント映像を今一度見てもらいたい。みんなが汗だくで喉をからす姿を見て、何も感じなかったらウソだと思う。

 そして、昨年の正月、ガリクソンのご両親に会って挨拶をする機会があったが、実に朗らかで優しさにあふれたお父さん、お母さんだった。もう30歳を超えた息子とはいえ、逮捕という形で全国に名前が出た日、親がどんな思いをしたのか。そこも噛みしめるだけ噛みしめて、新たな一歩を踏み出してもらいたい。(芸能記者・中西正男)

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中西正男

中西正男

芸能記者。1974年、大阪府生まれ。立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当として、故桂米朝さんのインタビューなどお笑いを中心に取材にあたる。取材を通じて若手からベテランまで広く芸人との付き合いがある。2012年に同社を退社し、井上公造氏の事務所「KOZOクリエイターズ」に所属。「上沼・高田のクギズケ!」「す・またん!」(読売テレビ)、「キャッチ!」(中京テレビ)、「旬感LIVE とれたてっ!」(関西テレビ)、「松井愛のすこ~し愛して♡」(MBSラジオ)、「ウラのウラまで浦川です」(ABCラジオ)などに出演中。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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