■川島以外の選択はあるのか?

 今大会のスペイン代表は、初戦のポルトガル戦でGKダビド・デ・ヘアがほぼ正面のシュートをストップしきれずにゴールを献上した。引き分けスタートになったチームだが、フェルナンド・イエロ監督は第2戦以降もデ・ヘアにゴールを任せている。スペインもまた、決断するなら第2戦のスタメンに起用するかどうかだったのだろう。

 もし考えられるとすれば、前回ブラジルW杯のオランダであったようなPK戦のみ他のGKに託すという判断だろうか。オランダは準々決勝のコスタリカ戦、延長後半の残り数分で、大会中にずっとゴールを守ってきたヤスパー・シレッセンから、ティム・クルルへの交代を行った。明らかにPK戦を見据えた交代で、クルルは期待に応えてオランダを勝利に導くセービングを見せた。しかし、準決勝のアルゼンチンではPK戦でもシレッセンがゴールを守り続け、結果的に敗れている。この時、ルイス・ファン・ハール監督は交代枠を使い切ってしまい、クルルを投入できなかったことを悔やむ言葉を発していただけに、大会前から指揮官の頭には起用プランが出来上がっていたのだろう。

 日本代表は決勝トーナメントに進出を決めた。これ以降のGK交代は、やむを得ない事情に陥るか、PK戦など特別な理由以外には考えられない。川島は1次リーグ第3戦のポーランド戦で、失点になってもおかしくないシュートをファインセーブで止めた。ある意味では復調傾向と考えることもできる。そのポーランド戦でキャプテンまで任せた川島をこの段階で交代するのは非現実的であり、選手たちには西野監督に対する不信感すら生まれてしまうだろう。

 決勝トーナメント1回戦で対戦するベルギーは、優勝候補に推される声もあるほどのタレント軍団だ。日本が番狂わせを起こすには、川島のビッグセーブは必要不可欠。批判を受けながらも3試合を戦ってきた男に、このゲームを託すしかない。