■ミスがきっかけで定位置失った選手も

 マルケジャーニはノルウェー戦でその後の時間を無失点に抑え、続くメキシコ戦、決勝トーナメント1回戦のナイジェリア戦をともに1失点で準々決勝までチームを導いた。しかし、アリゴ・サッキ監督はその後の戦いをパリュウカに託している。最終的にイタリアはブラジルとの決勝でPK負けを喫したが、両GKのどちらの貢献度が高かったのかという比較は難しいチームだった。

 見てわかる通り、いずれも負傷、退場、出場停止というやむを得ない事情がGKの交代に絡んでいる。これを現在の日本代表に当てはめて考えるのは無理があるだろう。

 明らかなミスによるGK交代があったのは、2010年南アフリカW杯のイングランドだった。初戦アメリカ戦に先発したのはロバート・グリーンだったが、正面に飛んできたシュートを後逸してゴールとしてしまい、引き分けスタートになった。ファビオ・カペッロ監督は第2戦から当時39歳のベテランGKデイビッド・ジェイムズへの交代を決断。1次リーグの残り2試合を無失点に抑えて期待に応えたジェイムズだったが、決勝トーナメント1回戦ではドイツを相手に1-4で大敗して大会を去った。

 もし、川島の交代を西野監督が決断していたならば、これが1つの類似例になっただろう。

 日本代表の話に戻すと、このW杯に入る前から川島には不安定なプレーが見られていた。国内最終戦となったガーナ戦では、壁の中で視野の確保のために空けていた位置から飛んできたボールに逆のステップを踏んでゴールを許している。さらに、後半には自身のプレーでPKを与えてしまった。欧州入りした後のスイス戦では、川島が味方につなごうとしたスローをカットされ、あわや、というシーンを作られていた。それを振り返ってみれば、W杯が始まってからいきなり不調に陥ったわけではない。むしろ、悪い流れを引きずったまま大会に入ったとさえ言えるだろう。

 もし、川島ではないGKでW杯の試合を戦うと考えるのであれば、通常であればその判断のタイミングは大会前。これまでの例を見ても、1試合目が終了した時点がギリギリのリミットだろう。つまり、親善試合2試合の時点ですでに不安定さがあったにもかかわらず、初戦のピッチに送り出した。そして、そこでもGKにも責任の一端がある失点があった。それでも第2戦に送り出したというのは、この先は交代を考えないという宣言に等しいと受け取れる。

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川島以外の選択はあるのか?