広島商の低迷も松山商と時期が重なっており、最後に甲子園で優勝したのは1988年夏の第70回大会で、甲子園出場も2004年夏の第86回大会から遠ざかっている。県内で長年のライバルである広陵だけでなく、如水館、広島新庄などの新興私立勢が台頭してきたことが低迷の原因というのも松山商と共通している。

 そして、この2校以外にも商業高校、工業高校といったいわゆる実業校と呼ばれる高校の低迷が近年目立っている。銚子商(千葉)、徳島商(徳島)、本工(熊本)、沖縄水産(沖縄)などがそれに当てはまるだろう。男子生徒の高校卒業者の大学進学率は過去20年間で1.8倍になったというデータがあり、進学を希望する生徒がいわゆる普通科のある学校を選択するようになったこと、また一方で実業系の学校も進学に力を入れて入学難易度が上がったことなどが野球部の成績にも影響したと言われている。

 また松山商では2008年に、広島商では今春に部内で不祥事が発覚しているが、伝統という名の下に行き過ぎた上下関係などが横行し、それが足かせとなっているケースも考えられる。PL学園の不祥事はまさにその典型であるが、時代の変化に対応できない組織が生き残れないというのは一般社会でも高校野球の世界でも同様ということが言えるのではないだろうか。

 しかし、その一方で低迷から復活の兆しを見せている学校が存在していることも確かである。その筆頭格が高松商(香川)だ。1996年夏の第78回大会以来甲子園から遠ざかっていたが、中学野球で実績を残した長尾健司監督が2014年に監督に就任すると翌年秋の四国大会、明治神宮大会を制覇。そして一昨年の選抜でも勝ち上がり、見事準優勝に輝いたのだ。それまでの高松商はどちらかというと手堅く守り、バントを駆使して1点を奪う野球が特徴的だったが、準優勝したチームは守備のミスを長打で取り返すような豪快な戦い方が目立った。それまでのやり方に固執しない新しいカラーを打ち出して成功した例と言えるだろう。

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期待される古豪の復活