この高松商の復活に触発されたのか、歴代4位の甲子園通算87勝を誇る県岐阜商(岐阜)も今年大きく舵を切った。昨年夏は2回戦で大敗を喫するなど低迷を続けるチームの再建に、同校のOBで秀岳館(本)を甲子園3季連続ベスト4に導いた鍛治舎巧監督を招聘したのだ。そしてこの春は県大会の準決勝で敗れたものの3位に入るなど早くもチーム改革の兆しは見え始めている。野球人生の集大成として取り組むと話す鍛治舎監督がどこまで名門復活できるかに今後も注目だ。

 また、1979年に甲子園春夏連覇を成し遂げた箕島(和歌山)も当時の尾藤公監督の長男である尾藤強氏が2013年に監督に就任すると、その夏に甲子園出場を果たし、昨年は中川虎大(DeNA)が育成ながらドラフト指名されるなど低迷期を脱しつつあるのもオールドファンにとってはうれしいニュースだろう。

 高校野球の世界も情報化が進み、有力選手が一部のチームに集中する傾向が強くなっている。しかしかつての箕島、池田(徳島)のように、地方の片田舎のチームが熱心な指導者やユニークな取り組みによって天下をとったことも高校野球の魅力であることは間違いない。一度栄華を極めたチームがどん底の低迷期を経て再び復活する。そんな物語がこれからも見られることを期待したい。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文
1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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