厚生労働省「社会福祉施設等調査」から、2013年と15年(10月1日時点)で比べると、営利企業が運営する認可保育所は488カ所から1337カ所に急増しており、伸び率は273%となる。同様に社会福祉法人の認可保育所は1万2839カ所から1万4049カ所に増えているが、社会福祉法院の伸び率109%と比べ、営利企業は著しい“成長”をみせる。しかし、その背後では、美香さんの例のように人件費を節減したいがためのパワハラまで起こり、素人企業の参入によって正常な保育ができないような現場が散見される。

 ちなみに、東京都の「指導検査報告書」(2016年度)によれば、認可保育所に実地検査を行った237施設のうち、145施設が何らかの文書指摘を受けている。営利企業か社会福祉法人や新規開設かという内訳は示されていないが、文書指摘の内訳で上位5項目の最多となる48施設が「保育士を適正に配置すること」と指摘されている。ほか、指摘を受けた項目は「調理従事者・調乳担当者の検便」(36施設)、「契約の意思決定の明確化」(36施設)、「避難・消火訓練の実施」(34施設)、「適正な現金預金管理」(23施設)だった。

 実地検査に入った認可保育所のうち文書指摘を受けた指摘率は17年度の57.0%から16年度は61.2%に上昇していることから、保育所が乱立するなかで問題のある保育所が増えていることがうかがえる。

 内閣府が主導して3年前から新設された「企業主導型保育所」にも次々に民間が新規参入し、約6万人分の待機児童の受け皿を担っているが、新規参入の危うさが見てとれる。企業主導型保育所とは、定員が約20人程度の小さな規模で運営される。既存の事業所内保育所と似た性格をもつが、事業所内保育所や認可保育所が税金や保護者の払う保育料で運営される一方、企業の福利厚生の意味合いが強い企業主導型保育所は事業者拠出金から運営費が助成され、認可外保育所の扱いとなる。児童育成協会が開設の申請を受け付け助成決定し、パソナに監査を委託している。

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一歩間違えば命の危険も