三振でスリーアウトと思った渡辺はマウンドを降りようとしたが、なんと、村越茶美雄球審の判定は「ボール!」

「ど真ん中じゃねえか!」と捕手の伊東勤が抗議。松本も試合後に「ストライクだった。正直あの判定にはホッとした」と証言するほどだったが、判定は覆らなかった。

 こんなときは、得てして皮肉な結果が待っている。仕切り直しのマウンドとなった渡辺は、直後の4球目を松本に左翼線に運ばれ、1対3と逆転を許してしまった。

 ところが、4回終了後、西武・東尾修監督が「あれはストライクだろ?」と抗議すると、村越球審は「間違えました。私の判定ミス」と誤審を認めてしまった。

 自らの誤審で試合がひっくり返ってしまったことに罪悪感を覚えたのかもしれないが、たとえ西武側が納得しなくても、判定は判定なのだから、最後まで「ボール!」で押し通すべきだった。

 試合は“疑惑の判定”に助けられた形のロッテが3対2で逃げ切り。この事件により、村越審判は2軍降格となり、同10日から2週間の再研修を課せられた。「正直の頭に神宿る」と言われるが、人間、時には正直になり過ぎるのも考えものだ。

●プロフィール
久保田龍雄
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

著者プロフィールを見る
久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

久保田龍雄の記事一覧はこちら