性感染症は不妊の原因になる。卵管や子宮頸管、さらには骨盤内に炎症を引き起こし、精子や卵子の通り道を塞いでしまうからだ。ほかに、肥満も排卵障害を引き起こし不妊の原因となることが知られている。性感染症や肥満の増加を受け、シェフィールド大学のビル教授は、「将来は3組に1組のカップルが自然妊娠できなくなるだろう」と推測している。

 米疾病予防管理センター(CDC)の報告によると、2016年の全米で確認されたクラミジア・淋病・梅毒の性感染症患者は過去最多の200万人を超え、いずれの疾患も急増しているという。

 その中で、最も多かったのはクラミジア感染症の約160万人。次いで、淋病の約47万人、梅毒の約2 万7800人であった。特に、2000年から2011年まで人口10万人あたり約250〜450人で推移していたクラミジア感染症は、2015年からの2年間で人口10万人あたり約500人にまで急増したという。

 これらの性感染症は、抗生物質を内服することで治療が可能だ。どちらか一方のみの治療では、性交渉により再び感染してしまうため、パートナーと共に治療することが必要となる。だが、パートナーになかなか打ち明けることができず、感染を繰り返してしまうケースは後を絶たない。

■近年急増する梅毒の報告数

 日本も、米国の状況を他人事だと言ってはいられない。というもの、性感染症の患者数が増加傾向にあるからだ。米国と同様、日本において最も患者数が多いのはクラミジア感染症、ついで性器ヘルペスウイルス感染症、淋菌と続く。

 注目すべきは、梅毒の急増だ。厚生労働省の性感染症報告数によると、2003年には509件だった梅毒の報告数は、2015年には2690件になり、翌年の2016年には4559件まで増加している。特に、妊娠可能な15歳から24歳までの若年女性が増加傾向にあるという。

 だが、これは氷山の一角にすぎない。というのも、これら性感染症は、初期症状を自覚しにくい。そのため、感染していることに気づかず、病院受診すらしていないケースが多いと考えられるからだ。

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