萩大島船団丸代表の坪内知佳さん(撮影/写真部・馬場岳人)
萩大島船団丸代表の坪内知佳さん(撮影/写真部・馬場岳人)
坪内さんは、ときには漁師ととっくみあいの喧嘩もしたという(撮影/写真部・馬場岳人)
坪内さんは、ときには漁師ととっくみあいの喧嘩もしたという(撮影/写真部・馬場岳人)

 4月16日放送の「激レアさんを連れてきた。」(テレビ朝日)に登場し話題となった、坪内知佳さん(31)。坪内さんの波瀾(はらん)万丈人生は、『荒くれ漁師をたばねる力』という本にもなっている。最初はCAをめざす可憐な女子大生だったという坪内さんが、荒くれ漁師のトップとして彼らの心をたばねていくまでには、幾度もの転機があった……。

【写真】ときには漁師ととっくみあいの喧嘩も…

*  *  *

 日本海に面した山口県萩市。その沖合に浮かぶ萩大島は古くから漁業で栄えた漁師の島だ。

 夕方出航した漁船が徹夜の漁を終えて、早朝、萩の港に戻ってくる。イキのいいアジやサバが次々と水揚げされる中、漁師たちの怒号に混じって、若い女性の声が響く。

「小西、おまえ、新人の面倒をちゃんとみたんか」
「魚はちゃんと向きをそろえて、丁寧に扱え!」

 彼女のひと声で、荒くれ男の集団が、右へ左へと素直に動く。よほど彼女の言葉を信頼しているのだろう。

 女性の名前は坪内知佳さん。萩大島の漁師たちで構成する船団「萩大島船団丸」の代表である。

 なぜうら若き女性が、海の男たちを束ねる女ボスになったのか。そこには坪内さんをめぐる何度もの転機の歴史がある。

 そもそも坪内さんは萩市とも、漁師ともまったく無関係。福井県の実業家の家に生まれた。CAに憧れて、高校時代にオーストラリアに留学。大学も外国語学部に進んで、CAへの道をひた走る今どきの女子大生だったのである。

 ところが最初の転機は大学時代に訪れた。

「アレルギー性の病気にかかり、CAの道をあきらめざるを得なくなったんです」

 夢を絶たれた坪内さんだったが、ほどなく気持ちを切り替えて、新しい夢を見つける。

結婚して幸せなお嫁さんになりたいと思ったんです。当時つきあっている人が萩で勤めていたので、大学をやめて、萩市に嫁ぎました」

●ナンパしたのは巻き網漁船のベテラン漁師

 すぐに妊娠。21歳で男の子を出産し、幸せな結婚生活がスタートするはずだった。だが二度目の転機はこのとき訪れた。

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