大阪桐蔭・根尾は二刀流として活躍できる? (c)朝日新聞社
大阪桐蔭・根尾は二刀流として活躍できる? (c)朝日新聞社

 36年ぶり史上3校目となる大阪桐蔭の連覇で幕を閉じた選抜高校野球。前評判の高さ通りの見事な戦いぶりだったが、その中心にいたのは史上初の選抜大会2年連続胴上げ投手となった根尾だった。昨年の選抜では主に外野手として出場し、新チーム結成後以降は遊撃手兼投手としてプレーしているが、投打にわたり高い能力を誇りプロからも注目を集めている。

 海の向こうでは大谷翔平(エンゼルス)が初勝利をマークした翌々日から指名打者として2試合連続ホームランを放つという離れ業をやってのけて見せたが、果たして根尾にもプロで二刀流として活躍できる可能性があるのだろうか。今大会のプレーぶりやこれまでの成長を見ながら検証してみたいと思う。

 改めて今大会の根尾の投打の成績をまとめると下記となる。

投手
26回 被安打14 失点3(自責点3) 奪三振26 与四死球13 防御率1.04

野手
24打席 18打数 9安打 8打点 5四球 1犠飛 1失策 打率.500 出塁率.583

 与四死球の多さと長打の少なさ(二塁打1本、三塁打1本)はあるものの、投打とも見事な成績と言えるだろう。ちなみに昨年は優勝時にマウンドに立っていたとはいえ、投げたのは2試合でわずかに3回、打者としても打率.211(19打数4安打)に終わっており、この1年で明らかな成長を見せていることは間違いない。

 もともと根尾が注目を浴びたのは投手としてである。中学3年時には早くも最速146キロをマークしており、スーパー中学生としてその進路は大きな話題となった。野手として注目されるようになったのは試合に出場するようになった高校1年の秋から。代打で出場した秋季大阪府大会4回戦の大阪偕星学園戦で、いきなり広い舞洲ベースボールスタジアム(現大阪シティ信用金庫スタジアム)の左中間に一発を放ち、打者としての大きな可能性も示して見せたのだ。

 そして1学年上には徳山壮磨(早稲田大)、同学年にも柿木蓮、横川凱といった好投手を多く抱えるチーム事情もあってその後も登板機会は多くなく、いつしか野手としての評価が高くなっていった。野手としての根尾を評価するときにまず話題となるのがその運動能力の高さである。

 一つ一つの動きに躍動感があり、外野からもショートからも見せる矢のようなスローイングはまさに圧巻だ。バッティングも体がねじり切れるほどのフルスイングが魅力で、とらえた時の打球はあっという間に外野の間を抜けていく。昨年秋までは攻守とも確実性がもうひとつという印象だったが、今大会ではプレーに丁寧さが出てきて着実にレベルアップしている姿を見せた。選手としてのタイプとしては同じく高校時代に投手だった松井稼頭央(西武)を彷彿とさせるものがある。

著者プロフィールを見る
西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

西尾典文の記事一覧はこちら
次のページ
投手としての能力は?