──財務省の職員は、なぜ政治家や昭恵夫人の名前を決裁文書に書き込んだのでしょうか。

 12日に公開された改ざん前文書のうち「特例承認の決裁文書(1)」(2015年2月4日)と「特例承認の決裁文書(2)」(2015年4月30日)を読めばわかります。この2つの文書には、政治家や昭恵夫人のほか、日本会議国会議員連盟の役員として、副会長の安倍晋三首相、特別顧問の麻生太郎財務相らの名前が出てきます。

 特例決裁に至るまでの経緯の説明では、2014年4月28日の会議の際に、森友学園側の発言として、「本年4月25日、安倍昭恵総理夫人を現地(国有地)に案内し、夫人からは『いい土地ですから、前に進めてください。』とのお言葉をいただいた」と書かれています。その時、籠池夫妻と昭恵夫人が一緒に写った写真が示されたことも記されている。

 本来、こんな話はどうでもいいことですよね。それをわざわざ公文書に残したのは、どういう意味なのか。私は、決裁文書を書かされた近畿財務局の職員は苦渋の決断だったと思うんです。本来なら認められないことを、様々なプレッシャーでやらざるをえなくなった。しかし、自分たちのやっていることは財政法に違反する可能性がある。そこで、責任を問われた時の言い訳として、政治家や昭恵夫人が取引に「関与」していた事実を書いたのでしょう。

──当初、財務省は特例を認めるつもりはなかったのですか?

 ありませんでした。大阪府の規則では、学校の校舎が建つ土地は、自己所有である必要がありました。ところが2014年4月15日、森友学園はお金がないので借地で学校経営をやらせてほしいと言ってきた。その時、近畿財務局は断っています。

 それが、先ほど説明したように、森友学園は同月28日、近畿財務局に昭恵さんの関与をちらつかせる話をして、写真も見せた。すると、その1カ月後の6月2日、近畿財務局は「売払いを前提とした貸付には協力させていただく」という回答に変わったのです。

 これだけではありません。2104年12月に開かれた大阪府の定例私立学校審議会で、児童数確保や資金の問題などから、森友学園の小学校設置計画が継続審議になりました。しかし、2015年1月27日に「認可適当」の答申が出ます。

 その間に何があったかのか。決裁文書では、2015年1月8日の産経新聞のインターネット記事で、昭恵夫人が学校の教育方針に感涙したと報道されたことが、わざわざ書かれています。そのほか、森友学園が国土交通省の副大臣(当時)である北川イッセイ氏に面会を求めたことも書かれています(国交省は面会を拒否)。

 昭恵夫人や政治家の名前を書いたのは、財務省の職員が「こんな要求は認めてはいけない」と心の中で思っていたからでしょう。

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