──籠池氏は、昭恵夫人の秘書に「有益費の早期支払い」も求めていましたね。秘書からの返信FAXには「引き続き、当方としても見守ってまいりたい」「本件は昭恵夫人にもすでに報告させていただいております」と書かれていました。

 籠池氏が昭恵夫人の秘書に手紙でお願いしたことは、すべて実現しました。交渉の過程でも、籠池氏はたびたび昭恵夫人の名前を出していました。

──貸付から売払いに変更することについて近畿財務局は、大阪航空局と相談し「小学校建設の中止による社会問題を惹起する可能性」をおそれ、売却の結論を出したと書かれています。「社会的な問題」とは何でしょうか。

 本当に損害賠償請求をおこされ、裁判になったら、財務省は現職の総理夫人が名誉校長を務める小学校と裁判することになります。宮仕えの身である公務員にとって、おそるべき事態です。そうならないために、ありとあらゆる知恵を働かせ、売却を認めたのでしょう。

 籠池氏から繰り返し要求を受け、政治家や昭恵夫人の名前も出され、近畿財務局の職員は大変だったと思います。その結果として、財政法に違反したと言わざるをえない取引になってしまいました。

──民間人が政治家の名前を使って役所と交渉するのは、よく聞く話です。普通であれば、財務省の官僚はどう対応するものですか。

 政治家本人のところに行って「大臣、この要請は違法になるのでできませんよ」と直接言えばいいだけの話。それで終わりです。その説得すらできなかったのが、今回の問題です。

──今後は、本省である東京の財務省の関与も焦点となります。

 太田充理財局長は、本省の指示を認めています。誰が、どのような指示を出したのか。あるいは、官房長や事務次官がどのように関わっていたのかは、もっと明らかにする必要があります。

 土地売却も改ざんも、佐川氏をはじめ、理財局だけの責任に押しつけて終わる問題ではありません。そのためには、土地取引をした当時の理財局長である迫田英典氏や官房長の岡本薫明氏も、証人喚問に応じるべきです。森友学園の弁護士や設計会社、建築会社も実態をよく知っているはず。もちろん、昭恵夫人も国会で証言しなければなりません。

 一方で、籠池夫妻への長期拘留は許されることではなく、人権問題です。前回の籠池氏の証人喚問には、重要な事実がたくさん含まれていました。籠池氏には、もう一度国会で証言してほしいと思っています。

(AERA dot.編集部・西岡千史)