娘の場合も、私たちは「ゴジラ化」という問題行動ばかりに目を奪われていました。

 しかし「イスに座る」という「何もしない」状態をほめ、積極的に評価したら、娘は意識的に座るようになりました。

 息子への言葉掛けも、この一件を応用したものです。

 問題行動を改めさせようとする場合は、その行動を叱ってやめさせようとしがちです。しかし、その方法は、むしろこじれることのほうが多くなります。特にイヤイヤ期など感情が波立つときは本人も気持ちを抑えられません。

 視点を変えて「できて当たり前とみなしがちな行為、しかし現状できていない行為」が偶然できているときにほめてみてください。

 子どもはたまたま無意識にそうしただけですが、「何でもないこと」に親が喜ぶのを見ると、無意識だった行為に積極的な意味が加わり、「そうしたい、そうでありたい」と願うようになります。

 その後、息子はキレなくなるどころか、妹におもちゃを壊されても「新しい遊び方がこれでできるよ」と、別の楽しみ方を見つけるようになったので、私は思わず舌を巻きました。

 意識というのは、問題と感じたものに観察力を集中させます。

 いろんな発見を可能にする優れた性質ではあるものの、気をつけないと「アラ探し」になります。ですから子どもは「僕(私)は普段よい子なのに、なんでキライな状態の僕(私)ばかり注目するの?」と、とても寂しい気分になります。だからこそ反抗的になります。

 しかし息子の場合は、「怒らなかった」という「不作為(何もしない)」状態を意識的に注目し、それを評価したことで、「怒っているときの僕ではなく、普段の僕を見てくれた」と感じたのでしょう。

 子どもだって怒る自分を好きではありません。

 自分でも好きになれない瞬間を注目されるのではなく、自分が好きになれる自分に注目し、それを評価してくれると、子どもは自然に大好きな状態を維持し、嫌いな自分でいる時間をなるべく短くしようとします。

「した」よりも「しなかった」を見てあげてください。