ロッテ・井口監督 (c)朝日新聞社
ロッテ・井口監督 (c)朝日新聞社

 昨シーズン、6年ぶりの最下位に沈んだロッテ。5位の日本ハムとは5ゲーム差ながら、チーム打率、本塁打、得点、防御率、失点は全てリーグ最低の数字に終わり、まさに屈辱のシーズンとなった。その結果、4年間指揮を執った伊東勤監督は辞任し、現役を引退したばかりの井口資仁が新監督に就任。一軍の首脳陣も小林雅英投手コーチ以外は全員が入れ替わることとなった。そんな新生ロッテが昨年までとはどのような戦いを見せるのか、上位進出のカギを握るプレイヤーは誰なのか、シーズンオフの補強とキャンプ、オープン戦での戦いぶりから展望した。

 オフに補強したのは新外国人の投手三人と野手二人。内野手のドミンゲスはメジャー通算42本塁打の実績があり28歳と若さもあるが、他の四人はマイナーリーグ生活が長く、外野手のペゲーロも昨年はBCリーグの富山でプレーしテストを経て入団したという経緯を見ても、大型補強と呼べるものではない。日本人選手でもソフトバンク戦力外になった大隣憲司の実績が目立つ程度である。もともと大物外国人やFAで選手を獲得する球団ではなく、新監督が就任したとしてもその方針は変わらないという印象だ。

 補強で唯一変化が見られた点はドラフトでの指名である。ロッテのドラフトは伝統的に投手の大物はそれなりに指名しても、野手の大物は避ける傾向が強く原辰徳、岡田彰布、清原和博、松井秀喜、中田翔といった目玉と言われた野手に入札していない。ちなみに、ロッテの日本人選手でシーズン30本塁打以上を記録したのは落合博満(1986年・50本塁打)が最後であるが、大物野手から逃げ続けた結果と言えるだろう。

 しかし、昨年のドラフトでは清宮幸太郎を指名し抽選では外れたものの、二度目の入札で投手に逃げることなく超高校級スラッガーの安田尚憲を指名し、見事に当たりくじを引いてみせたのだ。安田はパワーだけでなく技術の高さも備えており、打者としてのスケールの大きさは清宮にも引けを取らない。そして井口監督はキャンプから安田を練習試合、オープン戦でも積極的に起用し、中心選手に育てようという意欲が感じられる。今シーズンの戦力として計算することは当然難しいが、チームの将来を考えると安田の存在は大きなプラス要素と言えるだろう。

 今シーズンの戦力という意味で安田以上に大きいのが2位で入団した藤岡裕大である。亜細亜大時代は東都大学リーグで通算104安打をマークし、社会人でも層の厚いトヨタ自動車で一年目から主力として活躍した実力者だ。社会人時代の打撃に関しては同じトヨタ自動車の先輩である源田壮亮(西武)よりも確実に上であり、新人王の有力候補であることは間違いない。昨年なかなか固定できなかったショートに打力と走力のある藤岡を固定することができるだけで、大きな戦力アップと言えるだろう。

 他の内野陣はセカンドに昨年終盤に長打力を発揮した中村奨吾、サードに安定勢力の鈴木大地、ファーストに新外国人のドミンゲスが入ることが既定路線だが、将来を考えると数少ない高校卒の若手である平沢大河や香月一也の抜擢も期待したいところだ。外野手は実績のある角中勝也、荻野貴司、清田育宏、伊志嶺翔大、岡田幸文が今季中に全員30代となり、上積みが期待できるのは、今年27歳になる加藤翔平くらい。悪いメンバーではないが、将来を考えるとここでも若手の抜擢がほしいところ。その第一候補になるのがドラフト4位ルーキーの菅野剛士だ。大学時代には東京六大学歴代最多記録となる28本の二塁打を放っており、広角に打ち分けるバッティング技術の高さは見事。東海大相模、明治大、日立製作所とアマチュアでは常に名門でプレーしてきただけに、守備と走塁のレベルも高い。藤岡もそうだが、大学、社会人を経て入団した選手はすぐに中堅、ベテランとなるため、ぜひ選手としての“旬”を逃さないような起用をしてもらいたい。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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