ところが多くの写真コンテストにおいて、その権利の侵害が堂々と行われているのだ。コンテストの応募要項のなかで、応募作品、および入賞した場合の著作権についてよく見てみたい。この部分が、

*応募作品、入選作品の著作権は撮影者に帰属します

とあればこれは問題なし。ところが結構な確率で、

*入賞作品の著作権は主催者に譲渡されるものとします

もしくは

*入賞した作品の著作権は主催者に帰属します

 となっていることがある。これが何を意味するかというと、入賞した場合にその作品の著作権は主催者のものになる。つまり入賞と認められた瞬間に、撮影者の作品ではなくなるという規定になっているのだ。

 主催者側の言い分はこういうことだ。入賞するとその作品をコンテストの宣伝などに使うがその際、そのたびに著作者の確認を取っていられない。しかしその点については期間限定の独占的な使用権を規定すれば済むことだ。著作権の譲渡まで求める必要はない。

 こうした問題については、すでに多くの写真関係者や公益社団法人日本写真家協会が先頭に立って意識改革を進めだいぶ改善されてきた。しかしいまだに旧態依然とした取り決めで運営しているコンテストが少なくないのが現状だ。

■インスタグラムの写真募集にひそむ「権利の搾取」

 さて、ここでインスタグラムである。人気の高まりに比例してインスタグラムによる写真コンテストや写真募集が増えてきたことは先に書いた。そしてここでも著作権の譲渡を求める規定になっていることがあるのだが、インスタグラムでの募集の場合はその(著作権委譲を強制する)規定が多く、さらには次のようなケースが少なくない。

*作品を応募した時点で、その作品の著作権は主催者に帰属します。

 これはすごいことだ。つまり応募者が作品を応募する。しかもスマートフォンなどから“ポチッ”と送信ボタンを押した瞬間に作品は作者のものではなくなる、ということを意味している。さらに考えると、主催者はコンテストの建前のもと、多くの著作権の主張を受けない写真素材を集めることができるわけだ。なにしろ「インスタ映え」がはやる昨今だ。主催者が用意した賞品を獲得するために、たくさんの人が写真を撮影して送ってくれる。中には優れた作品もあるはずだ。主催者はカメラマンを雇う手間も費用も節約して、写真素材を手にできるというわけだ。

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一般の写真コンテストと感覚が違っている点は…