「難治がん」の記者 「いま自分は本気で生きているか」新年の“カレンダー”に思う (1/3) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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「難治がん」の記者 「いま自分は本気で生きているか」新年の“カレンダー”に思う

連載「書かずに死ねるか――「難治がん」と闘う記者」

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野上祐(のがみ・ゆう)/1972年生まれ。96年に朝日新聞に入り、仙台支局、沼津支局、名古屋社会部を経て政治部に。福島総局で次長(デスク)として働いていた一昨年1月、がんの疑いを指摘され、手術。現在は抗がん剤治療を受けるなど、闘病中

野上祐(のがみ・ゆう)/1972年生まれ。96年に朝日新聞に入り、仙台支局、沼津支局、名古屋社会部を経て政治部に。福島総局で次長(デスク)として働いていた一昨年1月、がんの疑いを指摘され、手術。現在は抗がん剤治療を受けるなど、闘病中

少しでもお正月気分をと、病院で出された小さな「おせち」の折り詰め

少しでもお正月気分をと、病院で出された小さな「おせち」の折り詰め

 新年は東京都内の病院で迎えた。

【病院で出された「おせち」の折り詰めはこちら】

 その瞬間、ベッドから見上げた天井はひどく白かった。その前1カ月ほど、3、4日に一度ほどのペースで体温が40度前後に上がっては下がることを繰り返していた。長いな、と思っていた先月30日に主治医から電話があり、「血液の培養検査でかびが検出された」という。病院への移動中に吐いてもいいように、スーパーのビニール袋をふくらませてタクシーに乗り込み、そのまま入院した。

 抗生物質の点滴で熱はすぐに下がった。だが何日かたつと、案の定、生活のリズムが変わった悪影響が出はじめた。ふだん通りに薬を使っているのに両膝下のむずむずがひどくなり、2晩続けてほぼ眠れなかった。むろん頭も働かない。
入院していても、用事は1日1時間の点滴だけだ。だったら自宅から点滴に通えばいいのではないか。医師に尋ねた。

 体のことを考えたらまだ退院は早いですよ――。そんな答えを予想していた。ところが返ってきたのは、いったん退院すると再入院するときに都合が悪い、というもの。「体調とは関係ない、病院側の都合で申し訳ないが」と医師は言った。

 ならばかたちだけ入院を続け、外泊許可を毎日出してもらえないか。必要な費用を支払い続ける代わりに事実上退院するいいアイデアだと思ったが、これもまずいという。「何日間も続けて外出許可を出すと、事実上退院できる体調の患者をなぜ入院させておくのかと(行政の)監査が入るかもしれない」

 思わず突っ込んだ。

「それって、私の体調とか治療と、何の関係もありませんよね?」

 今回の入院では都合3回、このセリフを言ったと記憶している。いやそうではない、という反論は一度もなかった。患者とのやりとりを円滑にするための方便だったと信じたい。

 病院の都合で体調が悪化しかねない――。自分の常識とかけ離れた境遇をどう理解したらいいか。そう考えたとき、思い浮かんだのはやはり日常生活では使わない用語だった。「疎外」。監査などの制度は人間が作ったものなのに、今やその手を離れ、患者や医者を振り回している、と。



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