中日・京田陽太(c)朝日新聞社
中日・京田陽太(c)朝日新聞社

 気がつけば、2月1日のキャンプインまであと1ヵ月を切った。プロ野球が恋しくなるこの季節だからこそ、改めて2017年シーズンの出来事を振り返っておきたい。「プロ野球B級ニュース事件簿」シリーズ(日刊スポーツ出版)の著者であるライターの久保田龍雄氏に2017年シーズンの“B級ニュース”を振り返ってもらった。今回は「走塁編」である。

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 中日ドラフト2位ルーキー・京田陽太が足で魅せた。

 5月24日のDeNA戦(横浜)、両チーム無得点で迎えた3回2死二塁のチャンスに、ウィーランドから右中間を破る先制タイムリー。ボールがフェンス際まで転々とする間に、自慢の俊足を飛ばして、一気に三塁を陥れた。

 普通なら三塁打止まりのケースである。だが、ここでDeNAに連携ミスが出る。右中間まで打球を追ったセカンド・石川雄洋が深い位置からライト・梶谷隆幸からの返球をカットしたが、緩慢な動作でもたつき、なかなかボールを投げようとしない。「まさかホームまで行かないだろう」の油断があったのかもしれない。

 悪いときには悪いことが重なるもので、石川の中継を受けるファースト・ロペスも目を切らして、捕球できる態勢ではなかったのも不運だった。そんななか、すでにオーバーランしていた京田は、「自分で(行けると)判断した」と迷うことなく本塁を突く。

 砂煙を上げてヘッドスライディングした時点で、まだボールは本塁に返ってきておらず、余裕でセーフ。まさに1987年の日本シリーズ第6戦で西武の辻発彦(現西武監督)が巨人のセンター・クロマティの緩慢プレーを見越して、中前安打で一塁から一気に生還した伝説のシーンを思い起こさせるような鮮やかな“忍者走塁”だった。

 ランニングホームランかと思われたが、記録は三塁打と野選。それでも、“銭の取れるプレー”であることに変わりはない。京田本人も「自信になる。年に1回あるかないかのプレー」とニッコリ。

 これですっかり勢いづき、6、8回にも安打を放ち、初回の左前安打も含めて4打席連続安打。1試合4安打は、中日の新人では現阪神の福留孝介が1999年に記録して以来、18年ぶりの快挙だった(その後、8月9日の広島戦でも福留以来の1試合5安打を記録)。

 2017年は積極果敢なプレーを売りに、新人では歴代4位の149安打、チームトップの23盗塁で、見事新人王に輝いた。

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久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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まさかの一邪飛でタッチアップ生還