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古賀茂明「日の丸背負う三菱重工の“没落”と経産省失敗の本質」

連載「政官財の罪と罰」

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古賀茂明dot.#古賀茂明#安倍政権

著者:古賀茂明(こが・しげあき)/1955年、長崎県生まれ。東京大学法学部卒業後、旧通産省(経済産業省)入省。国家公務員制度改革推進本部審議官、中小企業庁経営支援部長などを経て2011年退官、改革派官僚で「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。元報道ステーションコメンテーター。最新刊『日本中枢の狂謀』(講談社)、『国家の共謀』(角川新書)。「シナプス 古賀茂明サロン」主催

著者:古賀茂明(こが・しげあき)/1955年、長崎県生まれ。東京大学法学部卒業後、旧通産省(経済産業省)入省。国家公務員制度改革推進本部審議官、中小企業庁経営支援部長などを経て2011年退官、改革派官僚で「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。元報道ステーションコメンテーター。最新刊『日本中枢の狂謀』(講談社)、『国家の共謀』(角川新書)。「シナプス 古賀茂明サロン」主催

飛行試験の拠点となる米国の空港に到着したMRJ=昨年9月下旬、米モーゼスレーク (c)朝日新聞社

飛行試験の拠点となる米国の空港に到着したMRJ=昨年9月下旬、米モーゼスレーク (c)朝日新聞社

 天下の三菱重工業の危機というと、あまりピンと来ない方も多いだろう。同社は、武器や船舶、原発、火力発電所、ロケット、航空機、各種プラントなどを製造しているものの、消費者に身近な製品が少ないことから、三菱グループの中でも、三菱東京UFJ銀行や三菱自動車などに比べてややなじみの薄い存在かもしれない。

 しかし、天下の旧三菱財閥グループの中では、三菱東京UFJ銀行、三菱商事と並ぶ御三家の一つで、そのグループ内での地位は、三菱自動車とは比べ物にならないほど高位にある。
その三菱重工業が今、非常に苦しい状況に追い込まれている。原因はいくつかあるが、中でも注目を集めているのが、同社が総力をあげて開発している初の国産ジェット旅客機「MRJ」だ。

 第2次世界大戦後初めて日本メーカーが開発した旅客機YS11の生産が1973年に中止されて以降、日本の企業が独自開発した民間用旅客機はなかった。その後、経産省はじめ、政府は、日本独自開発による「日の丸旅客機」の実現のために長年にわたり、巨額の補助金・融資などで民間企業を支援していた。そして、その悲願を託すプロジェクトとして立ち上がったのが、三菱重工のMRJジェット旅客機プロジェクトだったのだ。現在では、MRJと言えば、三菱重工のプロジェクトだと誰もが思うのだが、実際には、経産省主導の「日の丸ジェット」プロジェクトだと言ってよいだろう。

 このプロジェクトは、2003年以降に本格的に立ち上がり、政府挙げての資金援助が行われた。毎年数十億円単位の資金が投入され、その結果、何とか2008年に実用機の開発がスタートした。その時の関係者のはしゃぎようは、まるで日本人が月面に降り立ったのかと思うくらいの大騒ぎだったのを覚えている。

 何しろ、当初は、わずか5年後の13年には初号機が受注先に引き渡される予定だったのだから、その喜びもわからないではない。しかし、その後は、度重なる設計変更などの不具合が相次ぎ、なんと5度も納入が延期される事態となってしまった。このため、当初、2000億円とされた開発コストも、5000億円近くに膨らんでしまい、開発を担当していた三菱重工業の子会社である三菱航空機は債務超過に陥ってしまった。相当厳しいということは、はたから見ていても明らかだ。

 さらに痛いことに、三菱重工がもたつく間に、ライバル企業のエンブラエル(ブラジル)、ボンバルディア(カナダ)などもMRJを後追いするように、MRJと同様の100席以下のリージョナルジェット開発に着手し、あっという間に追いついてきた。MRJの初号機納入は20年半ばの予定だが、エンブラエルの新型機も翌21年には投入される予定だ。

 MRJのセールスポイントは従来機比で30%の燃費改善だったが、ライバル勢の新型機もこれに追いつき、MRJの優位性はすっかり失われてしまった格好だ。しかも、開発当初1バレル100ドルだった原油価格は50ドル程度となり、今や低燃費は顧客の関心事ではなくなってきている。

 今後、売り込み競争が激化するのは必至。今後の展開では、繰り返される納入時期延期で信頼を失った三菱のMRJは、これまでの受注(447機。基本合意段階のものも含む)からキャンセルが続出し、数千億円規模の損失となる可能性が出てきた。

 現に、2017年11月22日付日本経済新聞は、「初のキャンセル濃厚」という見出しで、米航空業界の再編のあおりを受けて、近く40機のキャンセルが出る公算が大きいと報じ、12月15日には、ついに宮永俊一社長が、記者会見で、米イースタン航空が発注した計40機(オプション含む)の契約について、「おそらく、なくなるだろう」と認めざるを得なくなるところに追い込まれている。その会見では、計200機を発注している米スカイウエストなど大口契約先からのキャンセルはないとしたものの、それを額面通り受け取ることはできない状況だ。



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