野手でもうひとり、忘れてはならないのが大田泰示(日本ハム)だ。東海大相模高時代は3年夏の神奈川大会で大会記録となる5本塁打を放ち、超高校級の大型野手として注目を集め、ドラフトでは巨人ソフトバンクとの競合の末、1位で巨人入りを果たした。

 しかし、高校時代から当たれば飛ぶものの無駄なバットの動きが大きく、大成するまでに時間がかかるという声も多かったが、その評価通り、プロ入り後は苦戦することとなる。二軍では結果を残して毎年のようにレギュラー獲得の期待がかけられるものの、課題の確実性はなかなか向上せず、巨人に在籍した8年間での通算安打は100本、通算本塁打は9本と期待を大きく裏切る結果に終わった。

 ところが、昨年オフに日本ハムにトレードで移籍すると、今季は4月下旬から外野の一角に定着。自身初となる規定打席をクリアし、これまでの通算成績を上回る110安打、15本塁打を放ち低迷するチームで奮闘を見せた。巨人時代はなかなか打つ形が安定しなかったが、今季は細かいことを気にせずにしっかり振り切ることができるようになった。15本塁打中8本がファーストストライクをとらえたものであり、積極性が出てきたこともプラス材料だ。低めの変化球に弱く、打率と出塁率の低さは課題として残っているものの、大谷翔平(エンゼルス)が抜けるチームにとってその長打力は極めて貴重である。

 以前は30歳を過ぎるとベテランという印象が強かったが、トレーニング技術の向上によって確実に選手寿命は延びている。技術や読みなどは経験によって培われる部分が大きいため、体力的な衰えを防ぐことができれば、30歳前後になっても大きく成績を上げられる可能性は十分にあるだろう。

 また、下積みが長い選手ほど活躍した時の輝きが大きいことも確かである。来季もルーキーをはじめとした新星とともに、ここで紹介したような遅咲きの選手のブレイクにもおおいに期待したい。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文
1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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