EX THEATERのステージでも、アコースティック・ギターやフォークに対するかつての意識のようものについて笑いをまじえて話していたが、それが変わるきっかけとなったのは、ヘヴィなサウンドのなかでアコースティック・ギターの音が効果的に生かされたレッド・ツェッペリンの2作目(1969年)を聴いたことだったという。興味深い話だ。そして、そのロック史を代表する名盤に収録されていた「サンキュー」を、美しいアレンジで聞かせてくれたのだった。

 前置きが長くなってしまったが、このアコースティック・ツアーでCharのバックを務めたのは、古田たかし(ドラムス)と澤田浩志(ベース)の二人。ともに幅広い分野で活躍してきたベテランの実力派だが、古田はシンプルなセットのパーカッション、澤田はエレクトリック・アップライト・ベースできっちりとCharのアコースティック・ギターを支えていく。前述の「サンキュー」などでのコーラスも含めて、本来の意味でのアンサンブルという言葉を強く印象づけるステージだった。

 着席時のキャパシティ約1000人の会場は満員。ほぼ恒例行事となってきた年末のEX THATER公演を楽しみにしてきた人が多いようで、その熱心なファンを前にした約2時間のステージでCharは、「Smokey」「気絶するほど悩ましい」などのオリジナル曲だけでなく、「サンキュー」に加えて、クリームの「ホワイト・ルーム」、クラプトンの「プレゼンス・オブ・ザ・ロード」、スパイダーズのヒット曲でかまやつひろし作詞作曲の「フリフリ」、石田長生の「Happiness」などのカヴァーを聞かせた。

 アコースティック・ライヴと聞くと「生ギターを抱えてじっくりと」というイメージを持たれる方が多いかもしれないが、Charは、弦の響きが目に見えるようなアコースティック・ギターの音を最大限に生かして、よく知られた曲の可能性を広げていく。新しいなにかを引き出していく。

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